これは当初、私に相談のあった事件である。
名古屋市内の某署が捜査担当なのに、勾留場所が何故か市外のS警察(名古屋市内の私の事務所から約90キロ、電車で1時間20分ほどを要する)であり、一度たりと接見に通えそうにもないので他所にお願いするしかなかった(北海道や東北地方の弁護士なら、この程度の距離はなにするものぞ、なのかもしれないが・・)。
別の弁護士に初動をお願いし、最終的に勾留場所に対する準抗告で移送を申し立てることとして、無事、名古屋市内のお馴染みの施設M(同4.4キロ、地下鉄で4駅)に移された。決定文によれば、S警察に指定した時には空きが無かったからしょうが無いが、接見が大変だという弁護人の指摘に加え、準抗告時には施設Mに空きが出来ていたとして、移送を認めた。
なんの変哲も無い決定ではあるが、当初は施設Mに空きが無かった、という点に引っかかりを覚える。施設Mは、個々の警察署に設置されている代用刑事施設では無く、専用の代用刑事施設(専用の代用というのもおかしな話だが)であり、そうそう満杯になるようなことはないと思われるからだ。
やはり、時節柄、密を避けるために収容人員を減らしているのでは無かろうか。
密を避けるために収容人員を減らしたため、約90キロも遠方に飛ばされ、任意の弁護人のまともな接見が妨げられる・・コロナ禍だから防御権の制約はやむを得ない、などという物わかりの良さは厳禁である。それなら、身体拘束せずに進めるのが本道だろう。弁護人によれば移送後10日で罰金刑により終了したというから、なおのことである。コロナ禍で、捜査の必要性と防御権保障の、どちらかを譲らせる必要がある場合に、なぜ防御権が譲らされるのか。当初決定(遠方留置)をした裁判官は、自らの思考停止を恥じるべきだろう(そして、準抗告審も、身内庇いをやっていては裁判官に成長がないことを認識すべきだろう)。
(弁護士 金岡)