この話題も何度目か、と思うが、諦めずに書く。
この一月で3件目の、検察官準抗告をされた事案(勾留却下に対する)である。
前日15時に相談を受け、20時ころまで関係方面との協議。当日は15時まで五月雨式に意見書やら資料やらを検察官に提出し勾留見送りを請求するも、敢えなく16時に勾留請求。1時間で裁判官用の意見書を提出し、無事17時50分に勾留請求却下。
却下の報を受けて10分後、準抗告が出た場合の連絡網を敷こうと裁判所の令状部に電話をすると・・なんと既に全員が帰宅。無理矢理、他の通常部で残業中の書記官を見つけて(申し訳ない)、準抗告担当部を教えて頂き(週当番制なのだから初めから分かるようにしておいて欲しいものだ)、意見書提出時刻などをすりあわせる。18時50分、正式に準抗告を確認し(理屈抜きの執行停止はもはや、御約束)、19時50分に準抗告審用の意見書を提出。
20時55分、裁判所から「判断は先送り」との連絡が入る。
理由は?と聞くと、「裁判体の判断です」と。
説明になっていないと食い下がると「今日は遅いですし、明日の午前に判断します」とのことだと書記官が言う(それを依頼者に伝えて良いかと確認すると、「裁判体の判断だけにしておいて」と口止めされた)。
うんざりしつつ、翌日8時30分に意見書を補充、9時から接見して更に意見書を補充提出し、11時20分、準抗告棄却の一報を受ける。
以上が事実経過である。
午前9時に出勤して2時間20分で棄却決定をこしらえたと言うことは、当日23時20分まで残業すれば当日中に釈放できたということである。
それくらいして当たり前じゃないか?と思う。なにしろ、逮捕状を出し、「勾留請求却下を執行停止する」というどう考えても理屈に合わない概念で身体拘束を続けたのは、裁判所なのだから、それが刑訴法に反している可能性を考えたなら、可能な限り迅速に是正するのが憲法に忠実な裁判官像ではないのか(真面目に勾留執行停止の当否を判断しているなら、それなりに記録は読めているのだから、終局判断は目と鼻の先であるとも言える)。
なるほど、裁判官にも人権はあるし、書記官らも同様である。捜査弁護が活性化して準抗告数も増加しているのかも知れない(数えたことはない)。毎日毎日、残業させられては労務管理上の問題が生じるとは言えるだろう。
が、それは全く言い訳にならない。労働条件を改善するための裁判所の執務体制を工夫すべき問題であり、そのしわ寄せを被疑者や家族に転嫁するということは理屈が通らない。
例えば勾留準抗告は、夕方の勾留裁判に対し、即日、出されることも予想されるのだから、夜勤の裁判体を交代制で用意すればいいだけのことではないか。昼勤と夜勤で、業務上の必要性と労務管理を両立させている業態はいくらでもある。裁判所がそれを出来ないということはあるまい(というか、夜間でも逮捕状を出すくせに・・である)。
棄却決定の善し悪しは問題ではなく、その手続だけで、全く褒められない。
遅すぎるし、合理的理由も少なくとも説明されていない。
先日、本欄で取り上げたように、どちらかに宿題が出て翌日になる、というなら、それはそれで合理的理由である。説明さえして貰えれば、まだ腹の納まりようもある。しかし、「裁判体の判断」の一言で先送りされ、結局、(23時20分の判断の筈が翌11時20分になるという)この12時間の収容はなんだったのか?について得心がいく説明がないままというのは容認しがたい(裁判官研修で刑事施設体験研修を行わないと分からないのだろうか?)。
こちらは、夜半まで関係者との連絡を取り、説明し、朝からも同じように動いている。捕まえた側がのうのうとし、説明一つないという非常識な事態を、どうやって変えていくべきものか。弁護士会の出番であろう。
(弁護士 金岡)