検察官が不在だから判断は明日送り。
理由は言えないけど判断は明日送り。
こんな審理をする裁判官が居る。
憤懣やるかたないとはこのことだと思う。
聞くところではどこぞで裁判長をされているらしいが、こんなのに裁判をさせる方がどうかしているというのが偽らざる心境である。裁判所に送った抗議文を公開しておく。
(弁護士 金岡)
抗議書
2021年2月18日
名古屋地方裁判所長 殿
事件担当裁判官 宮本 聡 殿
弁護士 金岡繁裕
○に対する○○被告事件を基本事件とする、保釈請求事件について、下記の通り抗議する。
記
(抗議の趣旨)
担当裁判官は、身体拘束からの釈放を求める裁判に対し、真摯ではなく、迅速な裁判を心がけようとしないことから、当面の間、裁判実務を担当させず、再教育措置を施すべきである。
(抗議の理由)
1.そもそも、同事件について、主任弁護人(当職)が17日午後2時に保釈請求書を提出した後、担当裁判官は、午後3時32分、書記官を通じて「担当の検察官が不在のため検察官の意見書提出が明日になる」との理由を付して、判断を翌日送りすると宣言した。
これに対し、主任弁護人が抗議し、要旨「検察官は本来の担当でなくても意見を提出することが可能であるのだから、本日中に判断できるよう、検察官に意見書提出期限を指定する等の対応を取るべきである」と指摘したところ、担当裁判官は、書記官を通じて、「検察官には弁護人の要望を伝えた」と対応した。
主任弁護人が重ねて抗議し、要旨「要望を伝えるのではなく、本日中に判断しようという訴訟指揮を行う責務があるはずだ」と指摘したところ、担当裁判官は、書記官を通じて保釈保証金額の上限や納付見込みの確認を行った(これらは基本的に保釈請求書に明記されており、担当裁判官が、保釈請求書に目を通すことすら無く翌日送りを決定していたことが判明した)。
その後の午後5時37分、書記官を通じて「検察官からの意見書は18時頃到着予定」との連絡が入り、17日夜に判断が可能な準備が整った。
2.尤も、主任弁護人は、検察官の意見の内容次第では反論を要する場合もあることから、相弁護人Nに裁判所に急行頂き(午後5時37分まで、検察官の午後6時の意見書提出見込みが知らされなかったことは遺憾である)、検察官意見を閲覧し、その上で、1時間以内に補充意見を提出する可能性があると連絡し、現に、午後7時10分ころ、補充理由書(3頁及び添付資料1頁)を裁判所にファクス提出した。
すると担当裁判官は、午後7時36分、I書記官を通じて、「本日は判断しない」旨を主任弁護人に連絡した。
これに対し、弁護人が判断しない理由の説明を求めると、(応対したI書記官が、都度裁判官の判断を仰ぐでもなく自身の専断的な回答を交えたことから曖昧な点も残り、例えばI書記官が「本日は判断する必要性が無いと言うことです」と述べた上で、即時、言い過ぎだったとして同発言を撤回するような一幕もあったが、)最終的な担当裁判官の回答は、
(1)本日の判断はない、
(2)本日判断しない理由は説明しない、
(3)本日判断しない理由を説明しない理由も説明しない、
ということとなった(I書記官に念入りに確認済み)。
3.以上を前提に、抗議の趣旨について説明する。
(1)そもそも、担当裁判官は、担当検察官が不在であるの一事を以て、弁護人の意見も聞かず、保釈請求書に目を通すことすらなく、判断を翌日送りにしようとした(目を通していれば保釈保証金の準備状況を電話確認する必要はなかったからである)。
周知の通り、検察官は一体であり、例えば緊急に逮捕する必要が生じたような場合に「担当が不在なので逮捕状を請求しない」などということは有り得ない。それと同様、担当検察官が不在であるとしても、やろうと思えば意見書提出が可能な一体的専門家集団である。そうすると、担当裁判官は、上記のような至極常識的な事柄を知りながら、敢えて検察官に急ぎ対応することを求める訴訟指揮を行わなかったことになる。
また、担当裁判官は、保釈請求書に目を通して審理の所要時間や急ぐべき度合いを見積もろうともしなかったのであり、翌日送りの判断は明らかに安易であると言わざるを得ない。
以上よりすると、担当裁判官には、身体拘束からの釈放を求める裁判に迅速さが必要であることに真摯に向き合おうとしない姿勢が看取できると言わざるを得ない。
(2)このような姿勢であるから、その後、合理的な理由(の説明)もなく、判断を翌日送りにするという暴挙を為したものである。
ア)前叙の通り、担当裁判官は、当初(午後3時台)の翌日送りの宣言時には、「担当検察官が不在のため」という理由を説明していた。
つまり、説明できる理由がある時には説明するということである。
そうすると、午後7時台の翌日送りについて、理由の説明や、理由説明を拒否することの理由説明すら拒んだことは、合理的理由ではない判断の翌日送りであることが推認される。やはり、身体拘束からの釈放を求める裁判に迅速さが必要であることに真摯に向き合おうとしない姿勢が看取できると言わざるを得ない。
イ)弁護人としても、例えば「検察官が補充調査をしたいと述べている」等という事情により、保釈の裁判の判断に時間を要する場合があることは承知している。保釈も対審構造下の裁判である以上、両当事者が迅速さを損なわない限度で必要相当な準備を遂げる時間は必要である(なればこそ、弁護人も、万難を排して、数十分、1時間といった反応速度で対応するのである。前記午後7時10分ころの補充理由書も、出先で落ち着ける喫茶店を見つけて起案し、コンビニからファクスする程の緊急対応をした。)。
しかし、前叙の経過によれば、担当裁判官は、「担当検察官が不在のため」のような説明ならば明示するのだから、午後7時台の翌日送りについて、そのような裁判上の無理からぬ理由ではなく(なお、翌2月18日の判断時に至るまで、検察官からの追加意見や追加資料の提出が無かったことも、確認済みである)、また、その理由が弁護人を首肯させるだけの説得性を伴わないからこそ、理由説明を拒んだと推認することが出来る。
例えば、「許可不許可、どちらの判断であっても、他方当事者から準抗告が申し立てられ、裁判所職員や経理課、準抗告裁判体に更なる残業を強いることを避けたい」のような、許容しがたい理由による翌日送りが、疑われる。
(3)以上によれば、担当裁判官には、釈放を求める裁判は特に迅速さが要求されるということへの理解がなく、これに真摯に向き合わないことが明らかであるから、裁判実務を行うべき適性が疑われ、その再教育が急務である。
裁判官は、保釈を請求する被告人が、どれほど釈放の判断を待ち望んでいるか、理解すべきである。また、その身元保証人や家族が、被告人の帰りを、その前提として裁判所の判断が出るのを、今や遅しと心待ちにしていることを理解すべきである。このことが理解できているなら、安易に翌日送りにすることは考えられないし、ましてや、翌日送りの理由説明すら行わないような絶望的な訴訟指揮に至ることは考えられない。
担当裁判官には、このような基本の理解が欠けている。人権や、市井の人の気持ちを理解せずして、適切な裁判が出来るはずもなく、再教育が急務であると断じる由縁である。
以上