保釈裁判の話題の続き。

保釈事例90を編んだ時に、「特に」ということで名古屋地決2021年4月19日を収録した。これは当初許可決定であるが、詳細な決定理由が別添されていたことが目を引いたからだ。

裁判官次第、事案次第であろうが、このようにして理由を明記することは、その透明性を確保し恣意的な処分を抑止すること、不服申立の便宜を与えること、といった理由付記制度一般の本旨に適うし、刑事裁判においては特に被告人側の当事者性を高め、一方的に処分に服する立場ではなく、対等な立場から手続に関与させる上でも重要であり、どんどん実践されるべきだろうと考えていた。

その後、「あるところにはある」のだろうが、残念なことに当初決定に詳細な決定理由を付した事例は一つも見なかったのだが、つい先日、(私ではない別の)弁護人が得た許可決定に、それなりに詳細な決定理由が付されていた。
曰く、4号事由が認められるが、客観証拠の収集状況や、共犯者らの供述内容、実行犯との従前の関係性を考慮した結果、実効的な罪証隠滅の高度の可能性までは認められず、適切な保釈条件により、罪証隠滅及び逃亡のおそれを担保し得る、として、裁量保釈事由を適当としたものである。

僅々5行程度の理由付記でも、随分と違う、と感じる。
抑止できない程度に高度かどうかの、程度問題を論じる姿勢もよい。

考えてみれば、あらゆる決定には理由があるはずである。
従って、理由を書けないはずはない。
僅々5行程度なら、起案に手間取って保釈裁判が遅れるなどと言うこともない。
結局、書かない理由がない。
こういった実践が「お、珍しい」とならないように、保釈裁判を活性化させる必要がある。

(弁護士 金岡)