また一つ、弁護人立会要求から違法な逮捕に発展した案件が発生した。
担当弁護人の御報告によれば、経緯は次の通りである。
関連事件で起訴され、保釈。
その後の「余罪」調べ要求に対し、刑事被告人の立場であることを踏まえて弁護人と相談の上、刑事被告人の立場であるため立会なしの任意調べには応じられないと都度都度連絡をしていたところ、「余罪」で逮捕。
勾留請求却下、執行停止。
で、検察官準抗告棄却(大阪地裁2022年8月26日決定、矢野直邦裁判長)。
1.関連事件で既に被告人の地位にある場合の、実効的弁護を受ける権利保障の高度の必要性は言うまでもないことであり、関連する「余罪」にも広く及ぶと解するべきも当然である。
この問題は、かつて本欄2021年11月30日「大阪地検でも、弁護人を無視し恫喝する事態に」で取り上げたことがある(なお、そちらの事案は在宅+在宅で処理され、逮捕に発展することは一度もなかったが、公判では実刑が求刑された)が、担当弁護人によると大阪地検の無法ぶりは相変わらずだった模様である。
2.準抗告棄却決定は、「検察官は、被疑者が関連事件につき保釈された後、捜査機関からの出頭要請を6回にわたり拒否していることを指摘し、逃亡のおそれが非常に高いと主張するが、被疑者が出頭要請に応じるかどうかについて弁護人と協議し、応じない理由等について弁護人が捜査機関に個別に連絡していた経過が認められることからすれば、この点が直ちに被疑者が訴追を免れる目的で所在不明となるおそれに結び付くものではない」と説示している。
だとすれば、そもそも逮捕状が発付されたこと自体が、疑問である。上記事情は罪証隠滅の蓋然性とは結びつきがたく、逃亡方面にもまた、結びつかないとなれば、逮捕状の発付自体の違法を問うべきであり、逮捕状発付の適法性を争う刑訴法上の方法が無いことは、やはり看過しがたい法の不備である。
3.担当弁護人によると、なんと、逮捕状を発付した裁判官と、勾留請求を却下した裁判官は、同一人だという。
この裁判官の頭の中で、逮捕はいいけど、勾留はだめ、という棲み分けが可能になった理屈はどうなっているのだろうか・・。「一つの身体拘束」を、極めて短期間のうちに、認めたり認めなかったりするなら、それはつまり究極のところ、身体拘束に迷いがあるのだから「するべきではない」と割り切るほか無かった筈だ。
事実関係によれば、逮捕状の執行から勾留請求却下まで48時間以上が経過している。その時間、本当に逮捕要件を満たしている、つまり憲法上、正当な、比例原則に照らせば必要性に見合った最低限度のやむを得ないものだと、評価出来たのか、裁判官に問いただしてみたい。その場が国賠訴訟しか無いなら、それでもそうすべきではないかと思うところである(先例上、「古田国賠」では執行停止すら行われていないことを指摘しておきたい)。
因みに、勾留請求却下から準抗告及び執行停止「申立」まで更に4時間30分を要したという。その4時間30分の間は、釈放指揮を行わない法的根拠はないと言うほかないから、大阪地検の所業は違法な監禁行為と言われても仕方ないだろう。
4.そして準抗告棄却決定である。
前記引用の通り、刑事被告人の立場から同席要求を取り下げなかったことが逃亡の蓋然性に結びつくものではないと、検察官の主張は一蹴されている。
この余りに当たり前のことを否定する裁判官もまだまだ多く(「古田国賠」の名古屋高裁の連中など)、弁護人の地道な努力と、依頼者の決断により、きちんとした裁判例を積み重ねていくほか、ないのだろう。
(弁護士 金岡)