本欄2021年7月6日「裁判所、準抗告申立書のファクス送付を求める」において、裁判所側から準抗告申立書のファクス送付を求めてきた事例があることを紹介し、あわせて私の実践例の中で「保釈事件の検察官意見をファクス送付して貰い、正式な謄写は後日行う」事例があったことも紹介し、「『うちではやってません』は、もう通用しない」と結んだ。
それから1年、前記ファクス送付を求めてきたのと同じ刑事部(名古屋地裁刑事5部、但し裁判長は交代)で、保釈事件の検察官意見のファクスを拒絶されてしまった。
依頼者が緊急入院することに伴い、生活周りの諸条件を整備する必要上の指定条件変更申立の案件であり、「とにかく急ぎ」の事案であったが(申立から検察の意見の提出まで、2時間30分だったので、裁判所も審理を急ごうとしたに相違ない)、幾ら言っても、問答無用である。お陰で、検察意見の検討は翌日回しとなってしまった。
ファクス送付に極めて頑なな一派がいる、ということはよく分かっているつもりだが、現実的な需要を見ても頑として考え方を変えない、というのを見るに付け、失望する。というよりは失笑を禁じ得ない。
宛先を間違えなければ、裁判関係文書をファクス送付していけない理由は無い(まして弁護人には個人情報満載の申立書をファクス送付させるのに、裁判所だけがこれを断る理由はなにもない)。宛先を間違えなくする手法はいくつでもある(検察庁の「リダイヤル方式」など)。ファクスを使いこなせない裁判所に「刑事司法のIT化」は語れまい。
ファクス送付問題との付き合いは軽く10年を越えると思うが(ぱっと2013年の捜査弁護研修レジュメを取り出したところ、「取り敢えずファクス送信を求めるべきである」として実践例を紹介したくだりが既にあった)、遅遅として何も進まない。保釈裁判が遅れて良いことなど何一つないと言うことが、何故、分からないのだろうか。
(弁護士 金岡)