「弁護士の仕事でも、事実を基づいた以上の弁解を上手くすることのであり、けっして捏造するような、事実を歪曲するような弁護は弁護士業界の評判を損ねる」「被控訴人代理人は真逆なことを主張するのは、弁護士として罪悪感がないのですか?!」
これは、とある訴訟で相手方から出された準備書面の一節である。特に前段は日本語としてもおかしいが、相手方本人名義で作成され、それを相手方訴訟代理人弁護士が直送してきたという状況である。
期日に於いて、裁判所から陳述するのかと問われた相手方訴訟代理人は、同席していた相手方本人の意向を確認して「陳述を希望します」と発言した。
日本語としておかしい書面を、そのまま陳述しようとする弁護士がいる、ということにも実に落胆を覚えるのであるが、それだけではなく「捏造」「事実を歪曲」「真逆なこと」「罪悪感」等という言葉が並べられては、もはや誹謗中傷の域であり、どちらかといえば自由と正義の後ろの方に掲載されそうな書面である。それを「陳述を希望します」とやってしまう弁護士がいる、ということになると最早、捨て置けない。
そこで、対面の席から「本当に陳述する気ですか?」「代理人弁護士として陳述すると言うことは、相当の覚悟をお持ちだと聞いて宜しいですね?」「場合により、身分事項に関わると思いますが、構わないのですね?」と、やんわり窘めてみたところ、最初は煮え切らない態度であったが、裁判所からも「必要性は低い書面」と指摘があって、ようやく、陳述はしないという所に落ち着いた。
本人名義の準備書面が出てくるくらいだから、代理人弁護士としても苦慮するところがあるのだろうとは推察するが、(日本語としてもおかしい書面をそのまま陳述するだけでも大概なのに、さらに誹謗中傷かどうか等の)やっていいことと悪いことが区別でき、駄目なものは駄目と対応できなければ、弁護士としての価値はないだろう。
調べてみたところ、65期の弁護士である。約10年でこれか・・と思うと、少々どころで無く先行きが不安すぎる方であった。
(弁護士 金岡)