民事事件に関し特定の刑事判決の内容を証拠化する必要が生じ、あの手この手で漸く判決を特定して東京地検に確定記録の閲覧謄写を申請した。
当然の如く謄写は許可されず、閲覧のみ可とされるので、仕方なく東京地検に行く。閲覧室には御丁寧に、接写により閲覧メモを作成する方法を禁じる取り決めがくどくどと書かれており、所掲のパソコンで全文を引き写すしかない。
(幸か不幸か)見たい部分は全体の5%くらいだったのだが、一審判決数十頁、控訴趣意書が合計百頁弱、検察官答弁も相当量ということで、(もし全体が必要だというなら)書き写せるはずもない。
とまあ、ひどいものである。7700文字ほど引き写して漸く目的を達し、引き上げたのだが、考えてみれば馬鹿馬鹿しい労力である。
民事事件の書証にする目的だと述べているのだから、謄写を認めない理由があるとは思えず、悪しき行政慣行以上のものではないだろうと思う。
然るべき時期に、なにかしらの手立てを講じてみたいものだ。
それはそうとして、前記見たかった5%は、原判決後の事情(4桁万円の寄付)を踏まえて量刑上の議論が闘わされていたが、検察官は例の如く、多数の裁判例を繰り出して報告書を作成し、弁護側の1~2の事例の援用に片っ端から駄目出しをしていた。
このやり取りはよくみるもので、今更の感はあるが、上記のように、苦労して裁判例を特定して、東京まで閲覧に行き、7700文字ほど入力させられた後だと、そのやるせなさは一方ならぬものがある。
情報格差が大きすぎる。
私は、裁判例を全件データベース化して公開すべきかどうかについて、直ちに賛成であるとは言わない立場だが、例えば、判決後に当事者にデータベースへの掲載を拒否するか意思確認し、拒否しないものは判決のデータファイルを活用してデータベースに収録し、公表していくような工夫も議論するべきなのではないかと思った。
(弁護士 金岡)