【1】
被告人が「未必的な犯意も無かった」と主張したいようであるのに、原審弁護人が「未必的な犯意は争わない」と繰り返し述べている(と公判調書に書かれている)事件の控訴審を受任し、この点も争点に据えて弁護活動に臨んでいる事案がある。
原審弁護人に事情を問い合わせたところ、「未必的な犯意は争わないという主張はしていない」「そのような整理をしている原判決が間違っている」という回答であり、少々、頭がくらくらしている。
【2】
それはそれとして、被告人の「犯意」については、結構な虚偽自白(同じ頁の間に、その程度が、90%大丈夫と思った ⇒ 半々 ⇒ 100%犯意あり、と変遷している程の、見事なものである)が取られてしまっており、原審弁護人も流石に、部分不同意とした経過がある。
ところが、原審弁護人は7号8号の開示を受けること無く、更に検察官から法322条1項請求がされると「異議なし」と述べているのである。
この事情についても確認したところ、原審弁護人曰く「弁護方針を踏まえると、法322条請求に対し、被告人の全供述録取書等や、録音録画媒体の開示を受ける必要があるとは考えませんでした」「(任意性を争わなかったのは)被告人が任意性を争うことができるような事情を特に述べていなかったからです」という。
不同意にした被告人供述を法322条で請求されて、7号8号開示を受ける必要が無い場合というのはどういうものなのだろうか。不同意にしたからには、なにかしら事情があって不本意な供述が録取されたと考えるのが普通だと思うし、それなら、生の供述と、録取過程を確認すべく、7号8号開示は必須になるのだが・・。
また、被告人が任意性を争える事情を持ち出さないから争わなかったというのもまた、凄まじい回答である。捜査過程で絶望に陥り、弁護人にすら事実を伝えられなくなる刑事被告人が一定数、いるのだという、冤罪の歴史から何も学んでいない。
【3】
原審弁護人は、それなりに誠実に回答してくれたのかも知れない。
しかし、平然と上記のように回答されると、軽く絶望感に駆られる。7号8号開示を受けていないことについて反省の弁一つ出てこないとは、流石に想定外であった。
申し訳ないが、もう刑事弁護に手を出さないで欲しい。
確かに弁護士登録しているから、刑事弁護をする権利はあるだろう。
しかし、実態は無免許運転である。
(弁護士 金岡)