行政機関は法の執行機関であって、法に疎いことはあってはならないのだが、実務的にはしょっちゅう、法律よりも慣行、感覚、事なかれが支配している場面に遭遇する。
三重県の某役所に、行手法18条1項に基づく一件記録の閲覧に赴いたところ、「参考となる処分事例」が全文マスキングされていた。
どういう根拠でマスキングしたのか?と等と、「個人情報だ」という。
個人情報はいいが、こちらの閲覧権はどうなるのか?どういう根拠で閲覧権を制限したのか?というと、「なんでもかんでも閲覧できるわけではない」「他人の権利侵害は出来ない」みたいな、情緒的なことを繰り返すばかり。
法的根拠を説明するよう求めても全く回答がなく、「追って回答する」と繰り返すので押し問答になり、「来週いっぱいで回答する」ということになった。
こういうのは正しく、事なかれ的慣行に支配されて、法の支配が及んでいない典型事例だと思う。まさか行手法18条1項の閲覧制限規定が出てこないとは思わず、呆れてしまったが・・ひどいものだ。
個人情報というなら、被処分者の特定情報を消せば足りるわけで、全文をマスキングにするのは筋が通らない。
結局、悪気はなかったのかも知れないが、とりあえず消しておく方が良いよね、みたいなノリで仕事をされているのだろう。行手法18条1項は原則的な閲覧権を保障しているから、この役所は法の支配の埒外にあるということになる。そんなところから処分を受けかねない当事者は実に気の毒である。
なお、役所の担当は、仮に違法に閲覧が妨害されているとしても、手続を進めることに差し支えはない「立場」だと、暴言を吐いていた。立場も何も、とりあえず法律を読めよとしか言い様がないのだが・・。
(弁護士 金岡)