愚痴が増える増える。
同じようにやっているのに異常と思える結果が戻ってくる。
どこに原因があるのだろうか。

さて本題。
権利保釈の4号除外事由が、弛緩して過剰な身体拘束の温床となっていると指摘されて久しい。4号除外事由の弛緩しきった判断が如何に多いかは、刑事弁護人なら誰しも、しょっちゅう、感じていることだろう。
最高裁が2014年11月17日、11月18日と、身体拘束について(流石に見かねてだろうか)介入して以降、新時代到来かと盛り上がったものだが、一進一退であれば良いが状況は一進一退よりかなり悪いと観測しているところである。
「保釈を勝ち取る」事例90の後継本を作れば貴重な研究材料になるだろうと思うが、とにかく体感的にみて、状況は悪い。

本年12月15日の名古屋高裁決定を引用する。
「被告人及び共犯者らの捜査段階の供述状況、被告人と共犯者らとの関係性が不明であることなどに照らせば、被告人及び主任弁護人が公判における罪状認否で事実関係を争わない方針を示し、検察官請求証拠が既に取り調べられ、また、主任弁護人が上記各事件について被告人質問や証人尋問を求める予定は無く、被告人質問に応じる予定もないとの進行に関する意見書を提出したことを踏まえても、被告人が共犯者ら関係者に働き掛けるなどして重要な情状事実につき罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由は否定できない」(名古屋高裁刑事第1部、裁判長杉山慎治)
註)共犯者含め4名で供述録取書はゼロ通である。

検察官立証が終わって、共犯関係の詳細が見えてこないと。
しかし弁護側立証で、この点が手当てされる予定は無い。

以上が認定されているのだから、共犯関係の詳細が見えてこないまま裁判が終わると言うだけのことである。
それなのに「被告人が共犯者ら関係者に働き掛けるなどして重要な情状事実につき罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるというのである。法廷に顕出される見込みの無い、(及び、有利になると決まったものでもない)共犯関係の詳細について、保釈条件に違反してまで、実効的な働きかけとやらに挑戦し、これを成し遂げるだろう被告人がいるに違いないというのだから、私の理解を超えている(抗告申立てにおいて、説明できるものなら説明してみろと書いたが、例の如く無視された)。

頼むから説明してくれと言いたくなる、どう考えても理解できない理屈だったので、特別抗告には(慎重に表現を選び、心を込めて)「正気を疑う」と書いておいた。

起案にあたり、久々に、逐条実務刑事訴訟法などを紐解いてみたが、解釈としては、「その具体的蓋然性があるということ」、「現実的・具体的・実質的判断でなければならない」(何れも132頁)等とある。まあ、業界人であれば誰しも知っていようものである。
これを知らない者がいるとすれば、裁判所くらいなものだろう(確信的に為にする反対をしている検察官はどうだか分からないが)。いっそのこと、「逐条実務刑事訴訟法」を渡して、そこらへんの道を歩いている人を捕まえて判断して貰いたい。その方が余程、刑訴法に忠実な判断が期待できるだろう。

(弁護士 金岡)