本年3月25日記事「臭い物に蓋」の3点目で触れた伝聞例外の問題。「Aという実験結果が報告されている」という官公庁の議事録が、Aという実験結果との関係で法323条の伝聞例外にあたるか、という問題である。

裁判体が4月で全員交代し、同じ官公庁名義で「実験結果はAです」という回答が出された文書について、やはり検察が法323条で請求していた点が、伝聞例外に該当しないとして却下された(異議も棄却)(奥山豪裁判長)。極めて真っ当な判断である。これが法323条該当文書だというなら、「捜査の結果、誰々さんが犯人と判断しました」という警察署の回答であっても、犯人性立証に使えてしまう。前裁判体の判断(入江猛裁判長)は一体、何だったのだろうと思わされた。

新裁判体の体制下、検察が同じく「Aという実験結果」を立証するとして提出した、同実験結果を認定した複数の裁判例も、裁判長が「維持されますか?」として暗に撤回を促し(これは私の受け止め方である)、撤回された。このような立証が許されるなら、共犯者の法廷で共犯者の自白の下で有罪とされた主犯を、主犯の法廷で共犯者側の判決に基づき有罪とすることが可能になるのであり(私は実際にこのように指摘して反対意見を述べた)、検察の証拠請求は理解に苦しむところであった。

(裁判史に残りかねない争点があるが)そう著名でもない事件の、小さな証拠決定であるが、きちんとした手続を履践する裁判官は大歓迎であり、取り上げてみたものである。

(弁護士 金岡)