本欄本年4月1日付けで盛岡事件に関し「着・報」を公開したところである。
8年・5審級で、一人84万円・・まあ酷いな、という感想しかない。

ところで、年度末の在庫整理と皮肉ったが、同じ3月、名古屋地裁係属の「歴史に残すべき事件」として報告した案件についても費用補償決定がされた。
こちらは、
差戻前第1審 有罪
控訴審    差戻し
差戻し第1審 無罪
ということで、4年・3審級であるが、弁護人1名あたりの支給額は次のように算定されている(加算の割り付けだの消費税だのとややこしいので大まかな数字である)。
差戻前第1審 約39万円
控訴審    約18万円
差戻し第1審 約74万円

どちらも無罪になっていて、盛岡事件の方が2審級多く、しかも盛岡仙台という遠方なのだが、名古屋の事案の方が圧倒的に金額が高いという逆転した結論になった。着手金と報酬の合計が3審級で百万円超だとして、割に合うかと言われると全く合わないのだけれども(3日開催の裁判員裁判1回で同じくらいお手軽に稼げる筈)、5審級二桁万円に比べるとまだましだ。

この名古屋地裁決定(名古屋地決2024年3月27日・・事件番号は「(2023年)な(第3号)」だから、名古屋地裁では昨年、私選の無罪が3件くらいしかなかったということだろうか。因みに盛岡事件は「(2023年)な(第1号)」である。)の特徴の一つは、打合せ期日出頭諸費用を正面から認めたところだろうか。
本欄2023年12月11日付けで取り上げたとおり、主立った条文解説系の書籍に於いて、「打合せ期日」は刑訴法188条の6「公判準備及び公判期日に出頭するに要した」に含まれないとされているのだが、それは如何にも無理がある。そんなことをされた日には依頼者の自己負担を回避するため打合せ期日を全部拒否せざるを得ない、という指摘をしたところ、名古屋地決は打合せ期日の旅費日当を全て認めた(なお、盛岡地決は、これに対して、電話会議の方法による打合せ期日について~その拘束性は明らかであるのに~一切日当を認めなかった)。
この点で価値のある先例になった、ということは出来るのではないかと思う。

(弁護士 金岡)