実は先日、無罪判決を獲得した。
また最近は検察官抗告の嵐に見舞われている。
取り上げたい話題は山積みだが今月の更新回数は早くも9回・・。
とまあ、色々あるのだが、今日はやはり福井事件開始決定を取り上げないわけにはいかないだろう。
決定要旨しか読んでいないため、余り立ち入ったことは書きづらいし、決定文だけを前提とすると明らかに論理に飛躍がある奇妙な事実認定になっている箇所もあるように思われるところはある。
しかし、(関心の赴くままに挙げると、大づかみなところで、)①再審手続法(証拠開示に関する手続整備)の必要性を改めて喚起するものであること、②共犯者供述の引き込みの危険についての経験則の提供、③検察官による証拠隠しの不正事例が更に加わったことは、衆目の一致するところと見て良いのではなかろうか。
【① 証拠開示に関する手続整備の必要性】
決定文を読むと、例えば「新証拠によりK西の供述経過を確認すると」重要な不審車両の目撃に関する供述の激しい変遷があったことが指摘されるなど、現代の水準からすると驚かされる。
「K西の全供述経過」が第2次再審まで開示されていない、というのが驚きである。
再審だろうとなんだろうと、類型・主張関連程度の証拠開示法制が最低限の要請であることを改めて教えてくれる。
【② 共犯者供述の引き込みの危険】
決定文によると、「Y山供述は、無実の者を罪に陥れるような虚偽供述に当たるおそれがある危険なものとみるべきであり、冤罪防止の観点から、客観的証拠による裏付けのない限り、安易にそのような供述に乗りかかるべきではない」とある。
言っていることは至極当然であり、是非、今後の実務に活用願いたいものである。
【③ 検察官による証拠隠しの不正事例】
本欄の標題は、決定文を拝借したものである。
「確定審検察官は、3月19日に本件場面が放送されていない事実を把握したとみられるのに、(そのことを確定審で明らかにしないまま)なおも・・審理においても動かしがたい客観的事実として扱い続けた」との認定を踏まえ、裁判所に虚偽の心証形成をさせた検察官の所業を、「不誠実で罪深い不正の所為」と表現している。
確定審といえば1995年ころまでの出来事であろうが、それから30年、検察のそのような体質に変わりは無く、前田検察官によるFD事件等、氷山の一角と思しきものが時折、巷を騒がせている。
本欄で先日報告した国賠提訴案件(本年9月18日付け)も、「平間文啓検察官が、論告前、少なくとも第1審判決前には、その論告を客観的に破綻させ有罪判決が不可能になるだけの客観証拠(LINE履歴)を入手していたにも関わらず、それを秘して、うまうまと有罪判決をせしめた、という案件」であり、上記③の説示と全く同じ構図である。
この「不誠実で罪深い不正の所為」という表現を興味深く拝読した。
(弁護士 金岡)