検察送致後に事件の動きがなくなり、知らない間に不起訴になっている、という経験は誰にしもあると思う。
不起訴申入書に不起訴処分結果告知請求を一緒に書くよう習慣付けておけば良いのだが、それでも、不起訴申入書を提出する時機を検討している最中に実はもう不起訴になっていたということはある。

被疑者の身分は、それ自体の社会的な不利益性が否定できない上に、被疑者の精神的不安も考慮すれば、疑いをかけるだけかけておいて、密かに不起訴にして、それを知らせることがないという制度自体、随分なものだと思う。立件した以上、その帰結を通知する義務は一元的に負わせるべきではなかろうか。

そして、件名の通り、検察送致断念を知らず放置されていた、ということも当然に生じ得る。これもまた、制度の不備であろう。
執拗に「任意」取調べを要求され、犯罪者扱いされ、弁護人選任を余儀なくされる。と、途端に、事件の動きがなくなり、数ヶ月もして「どうなってますか」と聞くと、「もう送致しない判断をしました」・・と。
それならそうといえよ、と思う。
被疑者の地位に置き続けることに抵抗感がないというのはおそろしいことである。

因みに、何度かこういう経験をしたので、最近では早い段階で警察に対し、「(そもそも送致すべきではないという主位的な意見と共に)送致したら連絡するように」と要求しておくようにしている。
しかしそれでも、その約束が守られないまま、時間が経過し、不起訴にしたので押収物を還付したいという連絡を検察庁から受けたこともあるほどで、誠実さに欠けると思う。

(弁護士 金岡)