本欄2023年9月25日「上訴保釈の労苦」において、刑訴法344条2項による刑訴法改悪以降、上訴保釈が格段に厳しくなった印象があることを報告した。
他方、先だって行われた当地の経験交流において保釈に関し講演された関東圏の弁護士によれば、保釈保証金額がやや上昇傾向である以外は控訴保釈に苦労していない、という趣旨の内容であったらしく(私は直接聴講していない)、近しい名古屋の弁護士複数名から驚きの声が漏れた。
この問題に関しては、上記2023年9月25日付けにおいても指摘したとおり、「数年後、上訴保釈率を調べたときに、統計的に有意な差がある」かどうかを、確認する必要があると思っている。
感覚がどうとかいうのは主観的だし、個々の弁護士では偏りも生じよう。やはり統計的処理が最も正しい指標となるはずである。
さて、ここからは公的な統計の数字ではないのだが、確かな情報筋から教えて頂いた数字的なところで、名古屋高裁(金沢支部を含むようである)の「高裁の事件記録がある間の上訴保釈許可件数」に限った数字として、
2021年 25件
2022年 23件
2023年 13件
2024年 10件
となっているらしい(なお、人単位ではなく事件単位とのこと)。
見ての通り、申立件数が分からないので、許可割合を出すことは出来ないが、それにしても、くだんの改悪のあった2023年を境に、見事に半減していることは、やはり数字が偽らざる事態として憂慮すべきなのではないだろうか。
事件数がそう変わらなければ、申立件数もそう変わらないはずなのに、許可件数だけが半減しているとすれば、上訴保釈が格段に厳しくなったことが端的に実証されてしまっている感がある。
もっとも、前述の関東圏では違うのかも知れないし、ここ数年の名古屋高裁に特有の現象なのかもしれない。確かなことは、情報公開請求でもして、きちんとした数字を調べ上げる必要があるだろうが・・それにしても半減かぁ・・道理で・・と嘆息している。
従前の裁判実務を明文化しただけ、という説明は、実に嘘くさく、少なくとも半減している理由を説明出来ているとは思えない。
(弁護士 金岡)