某紙報道より引用。
「死刑が確定した元少年(註:再審請求中)とその弁護士が、拘置所(註:東京拘置所)での面会に職員が立ち会ったのは違法だとして賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は国に50万円余りを支払うよう命じる判決を言い渡しました。」

この訴訟の原告の一人は、私である。東京地裁平成28年2月23日判決、ということになる。
この事件は要するに、死刑が確定した再審請求者と弁護人との打合せに刑事施設が立会を付することが許されるか、という問題が主要争点であり(他にも争点はあるが判決書を見ていないので現時点では割愛)、同一の論点について、最高裁が平成25年12月に、刑事弁護人に準じた秘密交通保障を認めてからは、各地刑事施設は概ね、右に倣えで無立会面会を認めるようになっていた。
ところが東京拘置所は、判例を無視して無立会を認めようとせず、本年1月にも(これは今回の国賠では請求していない)無立会面会を拒否されたばかりだった。
国賠も数あるが、これほど負けるはずが無いと確信できる国賠もそう無いのではないか、という判例を単純に適用した国賠であり、予想通り、請求は認められた。

しかし、一妨害あたり、僅か2万円である。
別に2万円が5万円であっても嬉しくも何ともないのではあるが、2万円払えば弁護人との打合せを妨害できる、というお墨付きを裁判所が与えるに等しいこの結果は、理屈抜きに承服しがたいものである。
なにせ、刑事施設側は、自分の財布で賠償するわけでは無く、税金から来る予算で賠償するだけだから、痛痒を感じない。最高裁に反すると知りながらも、平然と妨害し、払えと言われれば税金から払うだけ。
この判決が確定した次に東京拘置所を訪問して、事態が変わっていれば良いのだが・・。そうでなければ、もっと強制力のある手段を考えるしか無いだろう(このことを論じ出すと長くなるので、本欄はここまでとする)。

(弁護士 金岡)