勾留されている被疑者被告人が、外部との交通を利用して罪証隠滅(や逃亡・・これは滅多に観念できない)に及ぶと疑うに足りる相当の理由がある場合、裁判所は、弁護人以外との面会・手紙の遣り取り等を禁じることができる(厳密に書けば「なろうとするもの」や領事館関係者なども除かれる)。これが接見禁止である。

そもそも「相当の理由」といっても曖昧としているが、名古屋地裁の現職裁判長に研修の講演を御願いした折には「相当具体的な蓋然性がなければ付けない」「慎重にやっている」と強調されていた。弁護士層との認識の乖離は甚だしいだろうが。

ここからが本題。
弁護人以外との面会・文通ができないとすると、床屋はどうか?という問題がある。まさか床屋が罪証隠滅はないだろうと思いきや、数年前(ちょっと曖昧だが10年に近いと思う)まで名古屋地裁でも大まじめに床屋も禁止対象になり、散髪したければ、その都度「部分的に解除して下さい」という申し立てをする扱いになっていた。実に馬鹿馬鹿しい限りで、部分的に解除する要請が拒否されたことも聞かないが、そうなら最初から「刑事施設の指定業者は除く」くらいのことをすれば良いのに、そういった知恵が働かない。捕まえて置く側には、捕まえられた側の生活の不便など、届かないのだろう。届けるのも我々弁護人の仕事ではあるが、それにしても床屋までとは・・。

実は、浜松支部の事案で、正面切って、床屋を含めた接見禁止が違法だという訴訟を起こし、無事、違法だという判断を得たことがある(浜松支部平成26年1月9日決定、千松順子裁判長)。
この時は、ついでに「宅急便」を接見禁止に含めるのも違法だという裁判を起こしていた。この点は、「拘置所職員を介して宅急便を使えるので、実質的には禁止されていないとも見ることができる」という、奇妙な理由で排斥された。とはいえ、結局、宅急便の運用は随分と改善されたと聞いている。

こういった地道な世直しで少しずつでも改善していっていると思っていたところ(行政の横並び体質からして)、小耳に挟んだところでは、千葉では「公刊物が接見禁止の対象とされ,解除のために不毛な手続きを踏んでいる」と聞いた(菅野亮弁護士・談)。
一般に、差入れ対象は「糧食、衣類、現金、公刊物、日用品及び寝具を除いて物の授受も禁止する」と表記され、つまり公刊物は接見禁止中でも自由に差入れできる(それを利用して暴力団関係者が圧力をかけたという騒動が起きたことは記憶に新しい)のだが、裁判員裁判で全国最多の無罪を産んでいるだろう千葉で、そういった後進的な事態があるとは驚きであった。
運動論と言うかどうかはともかく、過剰な接見禁止であり、どんどん不服申し立てを出すことで変えていって頂きたい、と思った次第。

(弁護士 金岡)