どの事件も、速やかに動くのが望ましい、と一般には言えるだろう。相対的には、捜査弁護などは、まずは速やかに動くのが生命線と言って過言ではあるまい。
先だって、福岡県の研修で、1日半で勾留却下まで漕ぎ着けた案件を紹介したところ、短時間で必要時間を捻出する方法について質問を受けた。率直に、後回しにして差し支えない案件(そちらの依頼者には少々、申し訳ないのだが、やはりその場その場で優先順位の上下はあるのが現実である)を繰り下げるなど、ぎりぎりの対応をしたことを説明したものだ。
さて、先日、何年か前に勾留却下を得た依頼者が、またも逮捕されたという連絡をよこしてきた。病気が事件化の原因である典型的な案件であり、順調に治療が進んでいると思っていたので慌てて面会に行ったところ、薬を飲むのを止めていたので悪化した、ということだった。
予定と予定の合間を縫い、面会→被害者に会い示談を取り付け(幸いにも「寛大な処分で」と仰って頂けた)→面会と走り回り(それでも、法律相談を気もそぞろに切り上げたり、裁判に2~3分、遅れると言った歪みが出た)、勾留請求に備え、結果的に、当夜には釈放となった。
被害者にすぐお会い頂けたこと(タクシー20分という近場だったこと)、収容場所も近場だったこと、細切れの時間だけでも残されていたこと、配偶者が機敏に献身的に動かれたことは、悉く幸運に恵まれたとしか言いようがなかった。慌ただしくも、刑事弁護人冥利に尽きる、慌ただしさであったと言える。
(弁護士 金岡)