昨日の本欄で、見出しと名誉毀損の問題を取り上げた。
そこでふと思い出したのが、とある法律事務所の宣伝である。
その事務所は、A市に本部を置き、周辺他県に幾つもの支所を持つ。HPでは刑事事件の専門性が強調され、曰く、裁判所や検察庁の協議会に参加している弁護士を中心として、日々、所内での研鑽を積んでいるのだという。
しかし、確認した限り、A市内のA裁判所で行われている協議会(例えばいわゆる「一審強化」等が挙げられよう)に、その事務所の弁護士は参加していない。では虚偽広告かというと、そう決めつけたものではない。周辺他県の裁判所での協議会には、事実、参加している弁護士がいるかも知れないからだ。
さはさりながら、一般人の見方から、その宣伝部分だけを見れば、(安易にも)本部のあるA市で、そういう中心的弁護士が活躍しており、その水準の弁護を受けられるのではないかと期待してしまうのではなかろうか。つまるところ、その弁護士がどこの誰かを特定することなく、意図的かどうかは知らないが恰も本部のA市で高い専門性を確保しているかに読ませるHPは、見出し(的なもの)を悪用した、不適切な広告と言えるだろう。
嘘は言っていないから取り締まれない、というのが実情であろうが、なんとも得心のいかない事態ではある。
(弁護士 金岡)