「異種前科の執行猶予中に薬物の再犯に及んだ。第1回公判前だが保釈は可能か。なお、罪体を認めており、一応職あり、家族も協力的であるとする。」
さて、どのように見極められるだろうか。
もちろん事案の個別性というものは大きいから決めつけるわけにはいかないのだが、薬物事犯のように証拠が定型的である類型は、罪体に争いがない場合、執行猶予中の再犯であるため原則短期実刑が見込まれるとしても、保釈率は高かろう。
第1回公判前、証拠開示未了の段階の被告人から上記のように相談を受け、国選弁護人は保釈は無理だと言っている、と言われた(念のために言っておくと、国選弁護人が本当にそのように断じたのか、それとも何らかの要因により慎重意見を表明したのか、そのあたりは決めつけられない。意思疎通がうまくいかなければ、被告人側からそう感じることは良くある。但し本件では、事実として、起訴後一月程度、保釈に進まないままではあった。)。環境調整的な検討を経た上で、9割方大丈夫だと思うよと説明して受任し、無事、保釈許可を得た(それなりに工夫を凝らし、請求書も手厚めに作成したことはもちろんである)。検察官は「然るべく」意見であった。
そういえば、今年の春だったかの事件も、全く同じ類型で、被疑者国選弁護人が全く保釈の準備をしていない状態で起訴直後に受任し、保釈を得た案件であった(そちらは検察官が抗告したが事なきを得た)。
かように見極めは重要である。保釈に尽力することが弁護人の義務であるなら、見極めを間違え保釈請求に進まないことは職務の懈怠と言われよう(微妙なものでそうであり、保釈方向のものを進めないとなると弁護過誤の域になる)。
この程度の見極めでも困難を伴うというなら、誰にでも国選弁護が出来る現在の制度が誤りと言うことだろう(かたや、弁護士が多くない地域では、みなで国選弁護を担わなければ制度が立ちゆかない。難しい問題である。)。
(弁護士 金岡)