【圧力】
これまで論じてきたように、本件は、刑事弁護の技術や精神に根ざした議論が必要である。私に言わせれば、それ以外の要素は不要である(弁抜き法案の再来を恐れる意見については別途、触れたい)。
にもかかわらず、政治的と言うべき圧力がかけられたことは、ここで明らかにしておかなければならない。
第一は、私の代理人K弁護士への圧力である。
当時K弁護士は、とある要職への会の推薦手続を控えていたが、某理事者(敢えて特定は控えよう)が、調査部会員の1名を介し、私の代理人を続けることで「推薦に不利益が及ぶ可能性がある」と連絡を寄越したのである。一体、何がそうさせるのか。今以て不可解ではあるが、池田桂子会長が刑事弁護委員会の総意を無視して裁判所への勧告意見を付さなかったことを見ると、そういったいかがわしくも誤った政治判断~争うべきところを争うよりも、波風を立てない判断~が作用していたと考える他ない。純粋に刑事弁護のこと、個別事件の依頼者の防御を追及する私からすれば、迷惑この上ない、いや勘違いも甚だしい。
第二は、処置方向へ持って行こうとした調査部会案をウェブ上で批判した弁護士への圧力である。同弁護士もまた、とある要職への選任手続を控えていたが、それに悪影響があるとして記事の削除を要求された、という。なりふり構わないとはこのことであろう。
【取引】
あらすじでも紹介したが、舟橋直昭委員長は、第1回会議での状況を憂えて活発な防御活動を展開しだした私の代理人弁護士を介し、取引を持ちかけてきた。
私なりに要約すると、私のような辞任を用いた強硬な抵抗が真似されるようでは困るので、そうならないよう「反省」を表明するよう、要求し、その見返りに調査部会の報告の結論を処置不相当に変更しようというのである。ご苦労なことに、「そのまま」書いて欲しいという案文まで渡された。
調査部会員でもない一介の委員長が調査部会の結論を変更できるという専横ぶりからは、調査部会がお飾りであり、調査部会報告、つまり既述の通り二重に否定された調査部会報告が舟橋直昭委員長の意向そのものであったことが推認できよう。
なお、例の「じたばた」するという無策無能ぶりは、このとき、私が舟橋直昭委員長から直接、聞いた内容である。
さて、本欄で一方的に指弾していては、対抗言論の思想に悖り、公平性に欠けるというものである。そこで、以下に舟橋直昭委員長が提供してきた案文の全文を掲載する。
「法所定の手続による対抗手段・方法を尽くした弁護活動を行うべきと考える」という意見自体は、一も二もなく賛成するのだが、その「尽くした」極致が「じたばた」と言われては鼻白む。それで台無しの感があるが、あとは見る人に委ね、あくまで反対尋問権を全うする見地から地に足のついた議論をして頂きたいと思う。
【転載~案文等】
以下の部分まで書いて留め、その後、「生ぬるい」等の反論等は書かない内容の補充書を出せないでしょうか、という案です。
「裁判期日における辞任が効力を生じないと判断される恐れがあること、及び、辞任に続く弁護人の再選任が弁護権行使のあり方として弁護士相互の論議の対象となり得るとする意見が一方に存すること、はそれぞれ理解した。その上で、いわゆる『弁護人抜き裁判』特例法案の成立阻止運動の過程で作成された『弁護士自治に関する答申書』(昭和53年11月25日日弁連理事会承認)に立脚して制定された『刑事法廷における弁護活動に関する倫理規程』第2条の趣旨を踏まえ、訴訟手続きのあらゆる段階において裁判所に対する粘り強い主張や説得を行った上で、相当かつ可能な刑事訴訟法所定の手続による対抗手段・方法を尽くした弁護活動を行うべきと考える。」
最後に付言しますと、「今回の辞任が辞任のあり方として弁護士倫理上問題がありうるとの考えがー方にあることを理解し、今後弁護活動をする。」という趣旨が出る表現で、金岡さんにも納得できる表現内容が見つからないでしょうか、ということです。ご検討の程、どうか、よろしくお願い致します。舟橋直昭
(弁護士 金岡)