以下、議論の概略に触れる。
なお、私や私の代理人は手続から排除され、また、「議事」については出席委員には非公開の義務がある。「議事」の捉え方の広狭によるとは言え、一般委員の匿名性には特に注意して述べていきたいと考える(前にも指摘したが、事後に刑事弁護委員会内に設置された反省のための検討会で現れた事情は、既に公開しても問題ないだろう)。

【舟橋直昭委員長による有罪の冒頭陳述】

検討会でも槍玉に挙げられているようだが、第2回会議は、調査部会ではなく、また、中立の立場であるべき議長役である舟橋直昭委員長による「有罪の冒頭陳述」から始まったという(ご苦労なことにパワーポイントまで用意されていたらしい)。
出席委員からは、なぜ議長が意見を延々と述べるかについて異論が出されたが、議長は聞く耳を持たず最後までやりおおせたという。

【訴因変更?】

議長によれば、議事の対象は弁護士倫理上の問題であり、辞任の有効性は議論しないと言うことであった。私からすれば問題の本質に一切触れないということであり、論外との感しかしない。
恐ろしいことに、「有罪の冒頭陳述」の締めくくりは「今回の行為が被告人の反対尋問権の確保だけで正当化されるのかどうかということをこの場でよくお考えください。」というものであったらしい。個々の事件の反対尋問権を抑圧しても守るべきものがあると説かれては、刑事弁護の精神は形無しである。

それはそれとして、一体、処置の対象性が議論されるべき「公訴事実」はなんなのか、ということ。これは会議の前から一部委員において舟橋直昭委員長に特定を要求する声があった(が無視されている)。
結局、それは弁護士倫理だと議長が決めつけたわけであるが、第2回会議ではいきなり、弁護士法31条に基づく「指導、連絡及び監督」に基づく、連絡をするのだと、議長が説明したそうである(その後、列席委員が議場から飛び出し弁護士法の解説を取りに走り回る事態となった)。処置取扱規程に基づく「助言」を調査部会が提案して、第1回会議で反対が相次ぎ、第2回会議になると、弁護士法31条に基づく「指導、連絡及び監督」(文言上、助言は見当たらない)にすり替わる。自ら不在の場で訴因が勝手に変更されては防御機会もへったくれもない。

このこともまた検討会で、対象者への防御保障の観点から改善が求められているやに聞いている。

【議論の諸相】

聞くならく、積極的に発言する委員の意見の特徴としては、(1)辞任による抵抗は有り得る選択肢であり、審理入りに付き合って反対尋問の続行を阻止するような呑気は話が有り得るのか、という辞任の正当性に向けられたもの、(2)弁護士会内部での相互批判は十分に尽くすべきだというもの、(3)国民に通じる議論をしなければならない、弁抜き法案の再来を恐れるもの、等があったようである。
弁護士会での内輪の常識にとどめないという意見の中でも、(3)とは逆に、弁護士会として正当な弁護活動を擁護することを旗幟鮮明にすることが制度論としても求められているという趣旨の意見もあったようである。

やはり観点が異なると議論がとっちらかる印象である。
異なる意見を許せない程、了見が狭くはないが、個々の事案の被告人の防御権の全うを忘れて、全体主義的な発想、政治的配慮に議論を進めるのは宜しくないと痛感する。個々の事案の被告人の防御権を抜きに何を言ったところで空々しいのだ。よりにもよって刑事弁護委員会が、「政治的反動が怖いから、今回は反対尋問を諦めて、冤罪で我慢してよ」と、口にして良いものだろうか。
第2回会議の内容は、匿名性に配慮し、全文反訳の上で弁護士会に記録が残されるべきであろう。そうすれば、同じ愚は犯すまいと思う。

なお、調査部会の事実認定における問題点(訴訟指揮に関する正確な事実認定が欠けていたこと)が結論部分において第2回会議で糺されたことは、本欄連載(5)で述べたとおりであるので割愛する。情報格差著しい一般委員が調査部会の事実誤認を糺せたのだろうこと(よく考えるまでもなく、私は調査部会報告書の最終版~どころか当初のものから一つとして~を見せてもらえていないので最終的なところは断言できないが)は画期的と言えば画期的である。

【修文の在り方】

さて、聞くところでは、裁判所への勧告意見が圧倒的多数で可決された。
その方向性は「裁判所に対し、必要に応じて柔軟な審理計画の見直しに応じる旨の意見を述べるという内容」であった。

第2回会議では、もともと処置相当の調査部会案を毛ほどに修正したのみで処置不相当に変更したものに、更に裁判所への勧告意見をはりつけるという、無理矢理な改訂を重ねたことについて懐疑的な意見が出され、きちんとした事実認定、評価の上に勧告意見を理由付けるべきである、従って、調査部会を解体し、別の調査部会を立ち上げ、再度、調査報告書を作り直すべきだという指摘もされた(そして、この意見の正当性は、調査部会員が概ね勧告意見に反対した(棄権した委員が1名いたという噂もある)という点に鑑みれば、至極真っ当な意見であったと言えるだろう。検察官に無罪判決の起案を依頼する等と言うことがありうるのだろうか?)。

議長はこれも容れず、自身への一任を取り付けたようであるが、そのことの「ツケ」は次回、触れよう。

このように、調査部会案が脆くも否定された場合、常識的に考えれば、正しい調査部会を組織し直し、再度、正しい方向性の調査を尽くし、正しい方向性の調査部会案を出し直させるという当たり前のことが出来ていなかったことは、やはり検討会で反省材料として検討されているようだ。このあたりも他会の参考になろう。
なお、処置手続は本来3か月以内とされており、その絡みで先を急ぐ向きがあったことは理解できなくもない。しかし、事情があればその限りではないし、第2回会議の時点で既に3か月は過ぎていたのだから、それによって上記のような不手際を正当化することには無理があるだろう。

(弁護士 金岡)