某裁判所での話。
検察官請求証人7名に対し、弁護人が全て採用を争う意見を提出したところ、裁判所はうち4名(A~D)を採用する決定をした(数字は改変したので念のため)。
ここまではよくある話である。
驚いたのは、その採用決定において、
・次回期日はAとBを取り調べる。
・ABCDの反対尋問見込み時間はそれぞれ○分程度とする。
と、されていたことである。
刑訴規則188条の3第2項は、証人決定があった場合、相手方当事者は反対尋問見込み時間の申出をしなければならないことになっている。逆に言えば、決定まで、申し出る義務はない。それなのに、申出を待たずに反対尋問見込み時間を一方的に決めるとは何事か、ということになる。
また、刑訴法297条1項は、証拠の取り調べ順序の決定については必要的求意見としている。やや曖昧なところのある規定だが、意見を聞かずに証人尋問の順序を決めることが手続違反であるのは明らかだろう(実際、証言を得る順番が攻撃防御において重要であることはままある)。
そこで、上記手続違反を理由に異議を申し立てたところ、認容され、付け足し部分が取り消されると共に求意見が届いた。
過ちては改むるに憚ること勿れ、というが、実際には憚ってばかり。原決定と同じ裁判体に異議を申し立てて認容されると言うことは滅多に経験しない。今回、認容されたのは・・まさか各規定を知らなかったと言うことはないだろうが・・。
ともあれ、手続を守らなければ、法が理想とする刑事裁判には全く近づけまい。
また、いやしくも法を守らせるべき裁判所が、自ら法を破っては形無しである。
その意味では貴重な経験と言えるだろう。
(弁護士 金岡)