本欄本年7月6日で、高橋徹裁判長率いる合議体の法廷傍聴記を掲載した。
(https://www.kanaoka-law.com/archives/717)
そこで、控訴趣意の要旨陳述を「そのような運用はしていない」として禁じられる訴訟指揮があったことを報告したが、本日の私が主任の案件で、要旨陳述を数分に亘り行うことが「認められた」ので、一応、報告しておきたいと思う(そもそも「認めて」頂く性質の問題なのか?はさておいて)。

なぜ認められたかを分析することは可能だが、ここでは触れない。
少なくとも、私の属人的な手柄と言うことではない。
ただ、意義があるとすれば、今後は「そのような運用はしていない」という訴訟指揮は通用しなくなったということであろう。

ところで控訴趣意の要旨陳述は、往時(というと大げさだが十数年来、)基本的に行っていたはずだと記憶している。事前に申し入れることもなく「数分で要旨を御説明したい」と述べれば、これを断固として禁じる裁判長を具体的に思い出すことは出来ない。
意味があるのか?と聞かれると、形式的なところでは憲法上の要請である裁判の公開の実質化を挙げることが出来るし、戦略的なところでも、その事案の要点を弁護人が的確に把握していることを知らしめ、裁判所と問題意識が共通であること、つまり、一審の審理を通じて真に争点となる部分が鮮明になり、裁判所はそこに向きあわなければならないことを確認し合い、うっかり軽視されないように刷り込む(人間誰しも、うっかりということはあるものだろう)ことに意義があるだろう。
前掲傍聴記のようにされると、気持ちが萎えて、やめとこうとなりかねないところであるが、ここは今回の事案の性質を天恵に、好機として、心を入れ替え、改めて取り組む必要があるように思われた。

(弁護士 金岡)