在宅もしくは保釈中であれば一部例外を除き問題なく隣に座れる(SBM)法廷風景が定着しているが、身体拘束中となると、流石に体裁の悪い裁判員裁判を除き、まだまだ抵抗されることがある。かれこれ数年前だが、非対象事件でSBMを求めたところ、二つ返事で「良いですよ」と応じた拘置所職員に対し、裁判官が熱心に誘導して翻意させた末、「拘置所が反対しているので無理ですね」的に拒否された思い出がある。
最近の経験で、珍しく依頼者を整理手続に同行した身体拘束案件(裁判員対象事件ではあるが、整理手続だから裁判員はいない)において、すんなりSBMが実現したものがある。裁判員がいないのだから体裁を繕う必要は無いとはいえ、公判審理入りすればSBMであるものを整理手続だからといって拒む理由も無いのだろう。そして裁判所が特に構いませんよという姿勢なら、拘置所も毒気を抜かれたように応じるのだ。
もろもろ考えると、裁判所は、一部例外の裁判官を除き、着席位置にさほど拘らないだろうと思う。特に裁判員裁判後の世代が育ってきているから、身体拘束中でもSBMに何の問題が?程度に思っているのではなかろうか。
抵抗勢力は、従って拘置所であるが、裁判所が毅然として訴訟指揮をすれば、実のところ、一部厳重な戒護体制を敷くような事例を除けばそこまで深刻な対立には至るまい。現に上記の通りなのだから。
そして、SBMが、形式・実質共に、あるべき姿であると理解したなら、ことなかれに走るのではなく、積極的に対峙して欲しいものだ。そうでなければ、裁判官をやっている意味などないだろう。
(弁護士 金岡)