本欄では諄く取り上げているが、身体拘束裁判は迅速に処理されるべきである。逮捕の令状事務を24時間体制でやるなら、釈放のための裁判も24時間体制で行われて然るべきである。憲法34条に「何人も、正当な理由がなければ拘禁されず」とあるのだから、釈放が遅れることは憲法違反に他ならない。

本欄2017年2月4日では、14時30分に起訴され、22時に保釈された案件を報告したことがある。全般的に身体拘束に係る裁判が低調な当地において、迅速な処理は誇るべきものと思っていた(東京方面だと、15時以降の申立の処理は当然に翌日回しになると聞いて仰天したものだ)。
しかし本欄2019年8月6日で、弁護人準抗告の保釈裁判について2日半をかけた案件を紹介したように、どうにも、安易に翌日回しが行われているのではないかと感じ出した。いわゆる働き方改革で、裁判官や書記官が17時以降も在庁して仕事をする体制に否定的なのだろうか、とも思われる。もしそうだとすれば、しかし、逮捕>休息>釈放、という価値観は、憲法的には正当化されない。然るべき釈放が然るべき時期に行われないことは憲法違反だということを、裁判所に認識して貰いたい。(休むな、と言うのでは無いので念のため。受け皿を作れ、と言っているだけである。司法試験合格者を増やしたは良いが、裁判官は一向に増えない。足りているというなら24時間やればよい。休めないというなら受け皿を増やせば良い。単純なことだ。)

今回経験した検察官準抗告の保釈裁判(基本事件は否認事件)も、残念ながら、安易な翌日回しを裏付ける如き、ちんたらぶりであった。
起訴後8日 担当弁護人より相談を受ける
9日 初回接見
10日 午前 保釈請求
検察官意見後の面談を求めると「翌日送り」宣言
11日 午後 裁判官面談
(金曜日だったので)「翌週送り」宣言
14日 午前 保釈許可
直ちに検察官抗告が申し立てられる
16時40分 弁護人意見を提出するも「翌日送り」
15日 午後 抗告棄却

どうだろうか。
私基準で言えば、相談を受けて2日、初回接見からは1日で、保釈請求まで一気呵成に進めている。もとより勝算があるから、可能な限り急ぐわけである。
これに対し、請求審だけで丸4日(土日を算入しなくても丸2日)かけている。確かに基本事件の「否認」の性質から、検察官が準抗告することは100%、見えており、裁判官からすれば慎重に、破られない裁判をしたかったのだろう。とはいえ、せめて土曜日に裁判するくらいの気概は見せられないものか。休息>釈放、という姿勢は、諄いようだが(逮捕の令状事務が24時間体制である限り)憲法が否定していると思う。
準抗告審も頂けない。従来なら、起訴後14日目の18時~19時には判断がされていたと思う。10年近く前だが、23時過ぎに検察官準抗告を棄却し、24時過ぎに釈放された経験もある。そこからすれば隔世の感である。

(弁護士 金岡)