本欄2019年10月8日「刑事法廷録音(通常事件・速記事案)の謄写」において報告した、要通訳尋問の録音体の謄写について、思い立って最高裁判所に司法行政文書開示請求をしてみたところ、件名の通達を入手出来たので、ここ(本欄末尾)に公表する(半角数字を全角に修正し、カンマを句読点に修正した以外は原文ママである)。

「裁判長の命令により録音装置を使用してこれを録取したとき」というのがどういう意味なのかはよく分からないけれども、これを「書記官の個人的趣味ではなく裁判所による職務上の指示を受けての録音」と読み替えるなら、要通訳尋問(質問)の録音は全て実施された上、審級を越えて保存され、確定後も検察庁に送付されて保存されていくという取扱いになっている。そして、事件記録と事実上一体の扱いを受ける以上、弁護人の謄写権の及ぶところとなる、というところであろう。
こんな大事な通達が知られていなかったこと(知らなかったこと)に衝撃を覚える。

なお、ものはついでと、「法廷通訳人に対する報酬の基準、目安について記載された通達等」の司法行政文書開示請求もしてみたが、こちらは不存在とのことであった。

(弁護士 金岡)

【通訳人の付された証人尋間等を録取した録音体の保管等に関する事務の取扱いについて】

平成元年11月30日総三第33号高等裁判所長官、地方、家庭裁判所長あて総務局長、刑事局長通達

改正 平成7年11月8日総三第82号
平成28年5月27日総三第111号

 標記の事務の取扱いについて下記のとおり定めましたので、これによってください。
なお、簡易裁判所に対しては、所管の地方裁判所長から伝達してください。

1 刑事事件について、国語に通じない証人若しくは鑑定人の尋問及び供述又は国語に通じない被告人に対する質問及び供述(以下「証人尋問等」という。)を通訳人に通訳させた場合において、裁判長の命令により録音装置を使用してこれを録取したときは、裁判所書記官は、録音装置を使用して録取したもの(以下「録音体」という。)を当該事件の事件記録とともに保管する。
従前、裁判長の命令により録音装置を使用して証人尋問等を録取している場合において、現に録音体が保管されているときも、同様とする。
2 上訴、差戻し、移送等の事由により他の裁判所に当該事件の事件記録を送付する場合には、1の録音体を事件記録とともに送付する。
3 当該事件の終結後においては、1の録音体は、平成4年9月4日付け最高裁総三第36号総務局長通達「刑事事件記録等の事件終結後の送付及び保存に関する事務の取扱いについて」の定めるところに準じて、当該事件の事件記録とともにこれを検察官に送付し、又は保存する。ただし、第一審裁判所の公判において公訴事実に争いがなく、刑の全部の執行猶予付き判決で確定した事件については、この取扱いによらないことができる。

付記(平28.5.27総三第111号)
1 実施
この通達は、平成28年6月1日から実施する。
2 経過措置
平成28年5月31日以前に執行猶予付き判決の言渡しがあつた事件については、なお従前の例による。