弁護人接見の場合を除き、刑事施設における弁護士の面会は基本的に一般面会であり、被収容者処遇法上、一定の例外規定がある他は、一般人の一般面会と何ら異ならないというのが法的な位置付けである。
とは言え、弁護士の職務上、面会に行く以上、20分なり30分なりの一般面会枠では仕事にならないことが多く、また、施設職員の立会があると何かとやりづらいというのも事実であり、しょっちゅう、問題を感じる。全部が全部を国賠に持ち込むわけではないが、一定数、国賠に発展するものもある。他の面会者を押しのけて特別扱いせよというわけではないが、弁護士制度があるが故の相応の配慮は必要だろう。
さて、昨今、こういう場合にこういう一般面会だった、というのを情報として掲げておくのも一興かと思い、以下、幾つか、取り上げてみる。
【1】依頼者である被告人から別件民事事件の相談を求められた場合
代用刑事施設においてのことである。接見中にたまたま、民事の話題になり、応対するくらいであれば良いが、専ら民事事件の相談のために面会するとなると、これを接見で処理することは弁護士倫理に反すると考える。
そこで、とある代用刑事施設に対し、「民事法律相談目的、一般面会さしあたり90分」を求めたところ、あっさり許可された。のみならず、こちらから言う前に、「立ち会いもしません」(法的には裁量的に無立会が可能)となった。
そればかりか「いっそ、接見でやってくれませんか」と・・。流石にこれは、倫理的に問題があるので辞退したが。
【2】既決拘禁者から他施設の処遇上の国賠の相談を求められた場合
判例上、刑事施設処遇上の国賠については、被収容者側には秘密の利益があるため、被収容者側が求めれば無立会になる。本件でもそうであった。
面会時間は、30分しか許可されなかった。「30分では話にならない」と苦情を述べても通じない。現場の職員は「再審相談もつければ1時間までいけますよ」という妙な助言をくれるが、倫理的にやれないものはやれない。
30分で国賠の事件性、受任の可否を見極めるのは不可能事である。
【3】検察官請求証人(既決拘禁者)に対する反対尋問準備のための面会
現在、国賠中である。
証拠決定後、召喚状送達前は、有無を言わせず30分に限定された。
他方、召喚状送達後は、時間無制限で「なんなら午後もどうぞどうぞ」であった。
召喚状送達前後で区別する理由はさっぱり分からない(国賠でもまともな説明はない)が、ともかく召喚状送達後は時間無制限という事実は残っている。
なお、同人が刑務官の前では話しづらい内容があると訴えるので無立会を要求したが頑として拒否され、この点も国賠で注目の争点である。
実例はまだまだあるが、思うのは、とにかく「人治」の弊害が強いと言うこと。合理性の欠片もない判断が「裁量」の名の下に行われている。真の裁量判断とは、事案の個性を踏まえて適切に判断することを言うはずだが、施設管理権者にとっては隠れ蓑に過ぎない。国賠で、一つ一つ、化けの皮を剥いでいくしかあるまい。
もう一つは、同じ「私」が、刑事弁護人として面会する時と、法律相談担当として面会する時とで、そこに課せられた倫理的行動は同じ筈なのに、取扱いが違うと言うことである。例えば同じ「私」でも、刑事弁護人として面会する時のPC利用は届け出制(と施設側は主張する)であるが、一般面会時は凡そ相手にもされない。弊害が、不正な利用の危険性であるなら、同じ「私」については同じ危険性を以て語られるはずであるのに、そうならない理由も分からない。
ともかく、「人知」「裁量」の名の下に被収容者の権利が必要以上に制限されることを等閑視することは弁護士の名折れであり、経験の共有と、然るべき行動が求められる領域である、と言える。
(弁護士 金岡)