本欄本年7月13日付け「国賠勝訴報告(電子機器持ち込み)」で取り上げた名古屋地裁判決は、国側控訴なく確定した。
これにより、入管施設において面会を求める弁護士は、所持品検査を要求されても、高度の倫理に忠実である限りにおいて、必要に応じ、これを拒絶する判断をした上で面会を行う権利があることが確認されたことになる。もとより「面会は許可するが面会室には案内しない」のような実質面会拒否と評価できる「説得」を続けることも許されないことも、確認されたわけである。

このことは、決して、「弁護士はやりたい放題」を意味するものではない。
刑事施設であれ入管施設であれ、弁護士は、倫理的に振る舞う必要がある。
例えば依頼者から託された手紙を撮影して、目も通さず記録にも残さず、家族に転送してしまうようなことをやっていては、今回のような裁判所の理解は得られまい。逆に言えば、倫理的振る舞いの積み重ねが、「施設管理権」の横暴を的確に抑止できる。
積み重ねが重要である。

そして、本件の本旨は、依頼者と弁護士の意思疎通の秘密を保つことにある、と捉えている。意思疎通の秘密が保たれなければ、誰が弁護士に全部を打ち明けられるだろうか。弁護士は、全部を打ち明けて貰わなければ仕事にならないが、そのためには、意思疎通の秘密の確保に徹底的にこだわる必要がある。
「たかがパソコンの有無くらい」「たかがパソコンの用途くらい」と片付けることは相当ではない。一つには、その用途の露呈が打ち合わせ内容を推察させる危険があるし、それは極く限られた局面かも知れないが、ここぞという時に施設管理による所持品検査を盾に秘密性を侵害され得るとなれば、そのような弁護士に秘密を預けかねると言われても仕方が無いだろう。どのような資料や機材を打合せに用いるか、ということも、徒や疎かには出来ないし、じわじわと領域を侵されることには常に警戒心を持っておくべきだ。

そういえば先日、名古屋拘置所の弁護士待合室で、拘置所職員と二人して拘置所の用意した「再生装置」の不具合を巡りあれこれ遣り取りしている弁護士(例の処置騒動の調査部会のお一人とだけいっておこう)を目撃したが、実に、嫌な気分にさせられた。
先達の努力に続こうとせず、波風立てない方を選ぶという神経は理解できないし、在野法曹にとっては倦むべきものだと思う。

(弁護士 金岡)