本欄本年4月5日付けで「指定感染症疑いによる弁護不能と手続保障」と題した記事を掲載した。いうまでもなくCOVID-19を念頭に置いたものである。
今般、愛知県弁護士会は、当番・国選担当者向けにCOVID-19対策に関する連絡文を発出しているが、そこでは、刑事弁護の使命と、罹患回避との板挟みに置かれている弁護士の苦渋が滲み出ている。
濃厚接触者とならないようにするため、アクリル板の通声部を自ら遮断せよとか、せめて正対するなとか、一概には言えないが出来るだけ接見時間は30分に止めよとか、書類の授受においても素手で触れない或いは殺菌等々・・また、弁護士会に防護服等の備蓄をしているほか、防護服等購入費の助成もする、という。
弁護士会の労苦が偲ばれる連絡文ではある。
が、それはそれとして、平時に比べて十分な弁護活動になり得ないことはいうまでもなく、被疑者被告人の防御水準の低下をどのようにして正当化したものか、疑問である。憲法が保障した防御水準は、COVID-19だからといって制約されまい。COVID-19の影響を言うなら、刑事手続を止めるか、代替手段の導入が本来であって、これを被疑者被告人に転嫁するような仕打ちには反対せざるを得ない。
身体拘束事件を念頭に置いているが、それであれば、感染者及び感染疑いがある等の場合(つまり感染の危険なく接見出来ない何らかの事情がある場合)、勾留執行を停止することが最低限、必要であろう。
また、代替措置としてウェブ接見の導入を検討すべきである。被疑者被告人のいるA警察と、弁護人が赴くB警察とに、それぞれ一対一対応するパソコン端末を設置すれば(被疑者被告人側の端末が設置される居室は、完全に防音施錠されることが弁護士会の視察により確認された上で、警察官が滞在しないことがウェブカメラの視界で確認されるようにする必要がある)、余人の介在しないウェブ接見を実現することは容易なはずである(ゆくゆくは一般面会にも応用されるべきであるが本記事では割愛する)。
なお、前記の通り通声部の遮断についても神経を尖らせざるを得ないのであるが、もとより通声部を遮断すれば会話が難しくなる(現に名古屋地裁がそれをやらかしたことは、先日、本欄で報告した)。
この点、経験する限りで、岐阜市内の刑事施設には、通声部をもうけない代わりに、マイクを用いて円滑な会話を実現する装置を導入しているところが散見される。通声部があっても声の通りにくい刑事施設も多いことを考えると、このような装置は、今回を契機に積極的に導入されて良いのではないかと思う。
(弁護士 金岡)