これまで、入ったところの衝立の陰で解錠方式・傍聴人出し入れ方式を併用していた浜松支部が、今後、傍聴人出し入れ方式だけで対応すると言い出した。
察するに、本欄を含め、あちらこちらで「浜松支部は・・」と吹聴したため、上から圧力でもかかったのだろう。

裁判官は憲法上、極めて強い身分保障がされており、それ故、相対的に見れば高給取りであるし、少々のことでは身分を喪失しない(但し、昇級を遅らせる、一度も合議体の裁判長職に就かせないなどの陰湿な嫌がらせは今も行われているのだろうが)のだが、出る杭になるなと言う同調圧力には大概、脆弱であると感じる。

極めて強い身分保障の利益は享受して、同調圧力には屈するとなれば、身分保障の利益の食い逃げである。

毅然として自分を貫くための身分保障を活用しないというのは、度しがたい。勿論、批判的意見にも耳を傾けてこその「自分」だが、入ったところの衝立の陰で解錠方式は、いささかの問題点もなく運用されていたのであり、後退させる理由は同調圧力以外には見当たらない。とすれば、この後退は、独立した「自分」を持たないが故の、食い逃げも同然のものだろう。

(弁護士 金岡)