最近の経験で、
・起訴直後に国選弁護人が保釈請求するも却下、
・身元保証人は「知人」、
・被告人は30歳手前、
・起訴状によると住居不定、
・被告人に積極主張がある、
という共通性のある事件を交代で受任し、無事、2週間程度で保釈を得たというものがある(1件は検察官が準抗告するも棄却、もう1件はこちらが準抗告して認容)。
何故、このような違いが生じるのかについては、勿論、経験に負うところの大きい証拠構造分析などの違いもあるだろうが、それよりも、唯一と言って良い環境調整という事情変更が奏功していると思われる。今回はこのことを取り上げたい。
A事件の国選段階では、弁護人から準抗告が申し立てられ棄却されているが、その説示内容によれば「身柄引受人や上記借家の借受名義人となっている者の属性及びこれらの人物と被告人との関係が判然としない」と指摘されている。B事件でもおそらく、同様の評価をされたところはあろうと察せられた。
巷間、知人を身元保証人にする保釈請求は、よく目にする。社会資源がそれしかないなら、それはそれで構わないが、裁判所が保釈をしても大丈夫と言うだけの中身がきちんと出せているかというと、残念ながらそういうものは殆ど目にしない。一体、赤の他人が同居して監督します、などと述べても、違和感を持たれることは多かろう。それだけに、このような方針であれば、弁護人が納得しただけの中身をきちんと疎明しなければ無謀ではないかと考える。生活状況が不透明に映れば、保釈条件不遵守の疑い、罪証隠滅の疑いにも、目が向こう。その意味で、「保釈金があるから良いでしょ」という点にも限度が出てくる。
さて、私の方では、何れも30歳手前の被告人であり、親との関係性を踏まえ、親との同居を前提とした保釈の環境調整を試みた。何れも中部地方を離れるが、親がきちんと自覚的な対応をしてくれるなら、それが最善であるし裁判所の心配も解消されようと考えたものである。
A事件の決定理由では「親が被告人と面会した上で、被告人の両親が実家で被告人と同居して被告人を監督する旨の陳述書を提出し、被告人も両親の指導に従う旨の上申書を提出していること・・」と指摘されている。
B事件の決定理由でも「親による身元引受が期待できること」が指摘されている。
保釈は、迅速に行う必要がある。
しかし、被告人が言うがままに不透明な生活環境に復帰することは、なかなか受け入れられがたく成功しないだろう。親兄弟のような社会資源がなければともかく、あれば、極力追求すべきだし、事件の行く末そのものを考えても、それが望ましくないはずはない。
単純に環境調整した「だけ」で、保釈の結論が逆転する出来事が相次いだことで、このことを痛感したし、ちょっとした工夫ですんなり保釈に至れる案件は潜在的により多いのだろうと思われた。
(弁護士 金岡)