ある裁判体から、急な人事の関係で、向こう一月、(その場しのぎの一回的なものを除き)合議体が組めないので審理を先送りして良いかと打診された。
そういうことは(好ましいことではないが)有り得ることなので、まあ(そこら辺から適当な間に合わせの裁判官を連れてきて審理されるよりは)仕方が無いとして、問題は、そのような打診を、尋問後、わざわざ被告人(保釈中)は同席させないと、人払いした上で、行ったことである。
迅速な裁判を受ける権利は、被告人の憲法上の権利であり、これを裁判所の人事の関係で全うできない時、謝るのであれば被告人に直接謝るべきであるし、説明責任を尽くすにしても名宛て人は弁護人ではなく被告人だろう。
未だに、被告人は裁かれる人である、という固定観念が染みついているのではないか。人として尊重し、手続保障を受ける権利がある、当事者その人である、という理解があれば、このような上から目線で、被告人を追い出しておいてから詫びる、説明する、などという、さもしい発想には辿り着きようも無いと思う。打ち合わせ期日には被告人は入れない、とする感覚もどうかと思うが、ましてやわざわざ人払いしてからとなると、なおのこと、解しかねる。
なお、件の裁判長は、上記の苦情を私が指摘するもどこ吹く風、更には、先送り日程を調整する段になって「こういう場面では(被告人に)入って頂いてもいいんですけどね、むしろ入って頂いた方が良いというか」と。どうあっても、裁かれる人に過ぎず、故に出頭確保のための日程調整には入れてやるけどね、という発想がにじみ出ていた。
こういう裁判官を法壇の上に座らせたくはないものだとつくづく思った(人事の微妙な内幕があるのかもしれないので、現時点では顕名は控える)。
(弁護士 金岡)