久しぶりに交通事案の実況見分に立ち会った。
甲号証で良く見る、「この地点で青信号を確認しました」「その時、先行車両の位置はこれこれでした」という、あれを作成するための実況見分である。

まず、依頼者は中央寄りの車線を走行していたが、一々、交通規制を行わないので、歩道上から「多分あのあたり」「あそこからの見通しは・・」などと大真面目に遣り取りをしていることに恐ろしさを覚えた。
これが実況見分調書になると、さも、中央寄りの車線からの見通しを確定的に断言したように書き換えられているのだろう(ということで、即日、弁護人の立場からも実況見分状況の報告書を作成して、ものが捏造されないように対抗策を講じなければならなかった)。

次に、警察官は、聴き取りに4分の1、メモに4分の1、状況把握に4分の1、周囲の状況に4分の1、集中力を割いている感じで、要するに、依頼者の説明が右から左に抜けていく状況を目の当たりにした。「(警察)ここでは信号の色は分からない、と・・」「(弁護人)いや、さっき、青信号を確認したって言ってましたよね」みたいな指摘を此方から何度も行う必要があった。
もし弁護人が立ち会っていないと、おかしな前提のままに辻褄を合わされた実況見分調書が出来上がるのは寧ろ必然であろう。

更に、警察官は(依頼者の五官による認識を記録するのではなく)総合的な事実認定をしたがる模様である。「いや、それだとサイクルに合うかな」と納得せず、サイクルに合うように話を誘導しようとするのには閉口した。

百聞は一見にしかずとはよくいったものだ。
実況見分調書が、いかに、作り物に過ぎないか、よくよく実感できた。
署名押印があろうと、内容的に疑わしいものはゴマンとあるが、署名押印すらなく、つまり署に持ち帰って一方的に作成される実況見分調書は、この調子だと、正確に造る方が難しく、捜査官の筋書きが書き加えられない方が難しかろう。

(弁護士 金岡)