先ほどの某公的報道局のニュースの副主題が、件名の通りのものであった。
もう少し詳しく言うと、初公判で赤信号を否認した被告人の弁護人の請求により、被告人車両のカーナビが解析され、その結果、信号サイクルとの突き合わせにより被告人側の赤信号が明らかとなり、被告人も赤信号を認めるに至った、専門家によれば、カーナビが信号色認定の決め手となった事例はかなり珍しい、というのである。

かなり耳を疑う報道である。
信号色が争点となる事案で、被告人車両にカーナビがあれば、それを解析するのは初歩の初歩だろう。捜査機関がそれをやっていないというのが一つ。更に弁護人が、(自ら解析するのではなく)解析を請求したというのが一つ。カーナビが信号色認定の決め手となった事例はかなり珍しい、というのが一つ。
どれもこれもがおかしな話だ。

捜査機関が被告人車両を押収したが、カーナビは見落とし、弁護人がカーナビに着目したが同データの証拠開示が受けられず、車両の還付も受けられないため、やむをえずカーナビの解析を請求し、その結果、不利な解析結果が提出された、と整理できるとなると、近代の裁判の水準からは遠く遠ざかっていよう。
証明力評価は別として、客観的なデータに目を向けなかった捜査機関もひどいし、然るべき証拠開示を先行させず“自爆”した弁護人も(ど)素人に過ぎる。
ついでにいえば、カーナビの解析結果が車両の移動状況の細かな認定に使われている事例など珍しくもない。

客観証拠に基づく刑事事件手続、然るべき証拠開示を先行させる充実した防御は、序の口の筈だが、なんとも驚きの報道だった。

(弁護士 金岡)