時節柄というべきか、4月はどうしても日々の法廷からの話題よりも書評みたいなのが増えてしまうかも知れない。

さて、不明にして、今朝方、このような書籍が発刊されていたことを知った。任官拒否・修習生罷免を軸とした書籍ならば読まなければと、事務員に無理を言って連休前に手に入れてきたもらったが、連休を前にして大体、読了したところである。

任官拒否・修習生罷免の関係が半分、23期の弁護士が思い思いに司法や来し方を語る随筆風小論集が半分、といったところか。

任官拒否問題・修習生罷免問題についても、かなり知らないことが書かれていて興味深かったが(修習生罷免を受けて世論に訴えた結果、国民審査の罷免率が一時的に跳ね上がったことなどは全く知らなかった。今の最高裁の判決を中学校、高校できちんと教えれば、国民審査も少しは機能するようになるのかも知れない。)、案に相違してと言うか、後者の随筆小論集にも惹かれるものがあった。
例えば法曹に法哲学や法制史等の基礎法の学びが欠如していることを指摘する第三章の豊川論文には説得力を感じたし(但し、そのことを転じて法曹一元に結びつけようとする論旨には強引さも感じる・・基礎法の学びが欠けているという批判は弁護士層にも等しく向けられるべきものだろう)、「憲法の、現実批判機能を鈍麻させてはならない。・・社会通念に席を譲ってはならない。」(第三章・澤藤)という指摘も重要である、等。
こうでなくては弁護士をやる意味はない、とか、自分はまだまだひよっこだ、と、思える読書は貴重だし、楽しい。

このように、大きく2つの内容があるが、任官拒否・修習生罷免方面に食指が動く向きは、「自立する葦 全国裁判官懇話会30年の軌跡」あたりにも手を伸ばすと良いと思う。既に20年も前だが、修習中に読み、今でも「青木英五郎著作集」と並べて大事にしているが、法曹の原点の一つだと思う。

(弁護士 金岡)