保釈を請求する余地のある事案は、起訴直後に行うのが当然である。否認事件であれ、社会的に耳目を集めている事件であれ、(国選事件をや「れ」ない強みかも知れないが)起訴直後でもそれなりに保釈は許可される(ほぼ全て否認事件になる、うちがいうのだから、間違いない)。第1回前まで広げれば尚更であるが、その布石とする上でも保釈請求は先ずは起訴直後が大原則だろう。そして、被疑者段階から弁護人が就くことが原則化している御時世、捜査段階から身体拘束に問題意識を持っていれば、起訴直後の保釈請求の準備も容易ということになる。

被疑者国選弁護人が、起訴された場合は私選を探して欲しいと対応して、こちらにお鉢が回ってきた事案がある。
X-26日 逮捕
X-24日 勾留
X-6日  起訴(勾留19日目が金曜日)
X日  初回相談&接見
X+1日  保釈許可
ざっとこうである。

確かに否認事件であるが、最決2014年11月17日を少し想起させる、当初勾留にすら強い疑問を覚える事案であった(延長に至っては何をか況んやである)。
X-6日時点で迅速に保釈請求すれば、その日中に自宅に帰れただろう(因みに、最終的な保釈許可に対し、(不相当意見ではあったが)検察官準抗告はなかった。個人的には、感覚的に数年ぶり・・の珍事である。)。
ところが、前記の方針があったためだろうか、国選弁護人は保釈請求をせず、私の、初回接見翌日の保釈請求まで更に無為に1週間、依頼者は拘束され続けた(法律相談を受け付けた時点で保釈準備を意識し、初回の相談、接見で必要資料を全て作成し終えたことは当然である)。最大限、好意的に見て、「私選に交代するなら保釈も私選の方針で」なのかもしれないが(そして時々、とんでもない保釈請求を見かけるので、それも結果論として時として賢明かも知れないが)、1週間も無為に社会から隔絶されることが正当化できるとはどうしても思えない。

様々な事情があるのかも知れないが、捜査段階の最初から終わりにかけて、身体拘束からの解放は、数少ない「積極的にやれること」である。
計画的に準備し、残念ながら起訴されたらすぐに保釈請求。
その意識と技術が、研修所における法曹養成段階、会内研修段階で周知徹底されていないとすると空恐ろしいのだが、十数年前を思い起こすと、研修所での保釈研鑽機会など無に等しく、また弁護士会にそのような初期教育があったような気もしない。この種の事態も宜なるかな、なのかもしれない。

(弁護士 金岡)