時に「どういう経路で刑事事件が来るのか?」と聞かれることがある。
そういう場合、「弁護士の持ち込みが半分、塀の中の口コミが半分」と答えることが多いのだが、ちょっと調べてみると、相当違っていた。
現在、動いている事件で分類してみると、
弁護士持ち込み 16
ウェブサイト 4
その他の口コミ 5
という感じになった。
まさか弁護士持ち込みの案件が6割を超えているとは予想外(同業者から当てにされているということだから、光栄ではある)。「塀の中の口コミ」は、釈放を得る技術が上達したこともあって激減したのかも知れない。
こういうことを少し考えたきっかけは、終了した事件で、依頼者から「実は・・」という打ち明け話を聞いたからである。
その依頼者は、自称刑事専門事務所から「・・・万円もってこい」と言われて門前払いとなり、うちに回ってきて、すぐに準抗告で勾留却下となった、という経過のある事件だが、うちに回ってきた理由は特に気にしていなかった。打ち明け話によると、自称刑事専門事務所で相談を担当した弁護士が、「自分は事務所の方針に逆らえないので、・・・万円のお支払いがないと受任は出来ないが、代わりにここに行けば、なんとかしてもらえると思う」趣旨のことを述べて、うちの名前を挙げたのだという。
自称刑事専門事務所から「割安事務所」と思われているかと思うと複雑ではあるし、この手合いから評価頂いても自慢のタネにもなりはしないが、勤務先を間違えたのかも知れない心ある若手弁護士の、せめてもの良心の受け皿になれたと思えば、心温まるお話と言えなくもない。
と、このように、ひょんなことで弁護士持ち込みの案件の割合が相当に高まっていることは分かったが、いつ誰に見られても恥ずかしくない、きちんとした仕事をしなければならないという緊張感は、実に悪くない(得がたい)ものである。
立場上、自分の反対尋問を見学するよう呼び掛けたりもしているし、あらゆる反対尋問は教材に出来る水準でなければならないという気持ちでやってはいるが、こういう統計的な裏付けを得ると、より一層、そうでなければならないと思うものである。
(弁護士 金岡)