被害者が住所情報を開示せず、検察官を通じて賠償金の受領も拒否している案件で、供託を選択するとする。
被害者の住所が不明なまま供託することができたとしても(※追記)、供託通知が被害者に届かなければ被害回復に繋がらない。こちらとしては、折角の供託、被害者がその気になれば受領できるところまで、進めたいと考える。
乱暴な方法論としては、(起訴後の事案なら)被害者の調書を不同意として尋問請求に伴う住所開示をさせる、ということも思いつくが、そこまで事を荒立てたくもない。
諸々、協議し、検察庁に供託通知を行い、検察庁から被害者に転送するという合意が形成された。そのことは供託書中に付記された(当初は、検察庁を住所地とする供託の方向で進めていたが、法務局が難色を示したので、それなら検察庁と法務局で協議してよと丸投げした結果である。なお、過去に、代理人弁護士住所を債権者住所地とする供託が受理された経験はある。)。
ありそうでいて、それなりに珍しい取り扱いではなかろうか、と思われたので紹介する次第。
【11月9日追記】 不法行為の損害賠償債務の履行地は被害者住所なので、被害者住所が不明であれば受領拒絶要件から法務局の管轄まで、いくつも支障が生じ、「被害者の住所が不明では受理できません」とする法務局の公式説明もあるにはあるが、本件では検察官を通じて明白なる受領拒絶意思を確認し、また、管轄も法務局の管轄を特定できる限度(A市、あるいはB町など)まで開示を求め、乗り越えた。
(弁護士 金岡)