本欄本年1月12日で、複数事件での勾留裁判のことを取り上げた。
勿論、実際の事件を念頭に置いたもので、【1】複数名への郵送による譲渡を一件一件バラして逮捕勾留したり、【2】同一共犯者間の事件で他の共犯者が逮捕勾留されているのに(そちら側の勾留状で確認済み)、此方の依頼者(別事件勾留中)だけが「後回し」にされて後から逮捕勾留されたり、といった問題事例である。

このような案件では、勢い、同時処理の要請を主張して勾留を争っていくいくことになる。最決2018年10月31日が、同事件では同時処理義務が発生しないという中途半端な説示で終わっているため、同時処理義務がどのような場合に発生するかは、これからの裁判例の積み重ねに委ねざるを得ないところである。
私の担当事件での先日の決定は、「もとより別罪とはいえ関連する事件を安易に分断して勾留・勾留延長(その上での処分保留)がいたずらに繰り返されるようなことはあってはならない」と説示したものの(そりゃそうだろう)、結論として「異なる部分も相応にある」「立場」「軽重」等を総合考慮して同時処理義務を認めなかった。
弁護人から見れば正に「いたずらに繰り返された」事件であり、裁判所が一体、どのような視座から「異なる部分も相応にある」と認めたのかは不明である。そして、この手の事案は往々にして起訴されず、捜査記録に対する検証機会を与えられないまま、ありうる誤判も闇に葬られていくのである。

ところで、私の考える同時処理義務には、異なる部分が乏しいような関連事件はもとよりであるが、相応に異なる部分があるとしても(或いは全く異なるものだとしても)、A罪で逮捕勾留されている被疑者からすれば同時にB罪でも逮捕勾留された方が、全体としての身体拘束は短期間で済むのであり、比例原則に照らせば、複数事件で逮捕勾留できるのであれば複数事件で逮捕勾留すべきであり、B罪を後回しにして後に逮捕勾留することは許されない、という意味合いのものも含まれている。
在宅被疑者に対し、逮捕勾留が可能であっても裁量的に逮捕勾留を見送ることは可能であり、逮捕勾留義務が発生するはずはない。しかし、既に身体拘束されている被疑者については、逮捕勾留が可能な他罪についても、その時点で逮捕勾留する義務が生じ、勿論、敢えて逮捕勾留しないことは捜査機関の裁量であるが、後にこれを取り出してきて逮捕勾留し、結果的に身体拘束期間を倍加させることは比例原則違反だと考えている。
同一被疑者に複数の捜査が同時並行で進むことは珍しくない。そうであれば、相応に異なる部分があっても、それどころか全く異なる事件であっても、比例原則に基づく同時処理義務(ないしは後から二度目の身体拘束をせしめることを許さない法理)を働かせるべきであり、敢えてそうしないことは憲法違反なのではなかろうか。

(弁護士 金岡)