法227条1項の第1回前尋問では、「裁判官は、捜査に支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人、被疑者又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。」とされている(法228条2項)。この程、その立会を行った。
第1回前尋問が請求されているようだということは知っていたが、一向に動向が知れないので裁判所に問い合わせると「期日は明後日と決まっています」「性質上、弁護人の立会は認めない方針なので通知しませんでした」と、こうである。
しかし事件本体では既に相当の証拠開示が進み、当該証人の供述録取書等も複数開示がされていた。起訴前ならいざ知らず、相当の証拠開示が進んで当該証人の供述するだろう内容は概ね把握できている弁護人が立ち会って、どうして「捜査に支障を生ずる虞」があると言えるのだろうか。
ふざけるな、と立会を申し立てると、一転して許可された。
第1回前尋問の一件記録からは、相当の証拠開示が進んでいたことが把握できなかったのかも知れない。そうであれば、裁判官に罪はない・・とはならない。弁護人に法228条2項の申立権が付与されている以上は、弁護人が気付かないままに手続関与の機会を失うことのないよう、通知するのが筋だろう。紙切れ一枚の手続書類で、法228条2項の要件該当性を正しく判断できるなどというのは、思い上がりも甚だしい。
とまあ、事案の性質や手続の進捗に応じ、法227条1項の第1回前尋問であっても立会を諦める必要はないのだが、裁判所の中には、弁護人を敢えて疎外しようという了見の輩もいる。危惧される場合は、弁護人の方から探りを入れるくらいが必要なのだろう。
立ち会えば、少なくとも異議により主尋問を糺すことが出来るし、必要に応じ、証言の趣旨を確認する等して次に繋げることも出来る。
申立書の一部を末尾に貼り付けておくので、もし裁判官が本欄を御覧になった場合は、その時には必ず弁護人に通知を頂きたいと思う(なお、上記事案では、更に別の部に第二の第1回前尋問が係属していたが、そちらは、大騒ぎしていたからだろうか、裁判所から通知が来た)。
(参考)
(中略)裁判官は、当然ながら記録の内容すら知らないことから、争点に関わる重要部分か否か、また、許される誘導なのか否かや、誤導なのかどうかを見極めることが出来ず、検察官の違法不当な尋問を漫然と眺めるしかないのが実相である(なお、主任弁護人金岡は、刑訴法226条の第1回前の尋問に立ち会った経験を複数、有するが、誤導、不相当を含め、相当数の違法不当な尋問を是正させることが出来た)。
このようにみれば、特段の事情がない限り、適正手続を監視する意識と能力を有する弁護人(繰り返しになるが、裁判官は、適正手続を監視する意識はあっても、争点を知らず、記録を読めないため、その能力には欠ける)が立ち会うことが、刑訴法の二大目的である、手続保障下の真相究明のため、必要である。
(弁護士 金岡)