過日、愛弁と刑弁フォーラムとの共催(いわゆる地方ゼミ)で、重大事件弁護研修が行われた。愛弁の裁判員対応名簿掲載に必要な任意選択研修の一つを刑弁フォーラムが担うというのも、なかなかの躍進ぶりではある。
「重大事件」は、重大事件と言うよりは「死刑か無期か」の事件と言えば、より伝わるだろう。時間の関係で7割程度で退席した(こういうこともあるのでレジュメはしっかりしたものの方が有り難いのだが・・)が、折角なので簡単に取り上げておきたい。
担当講師は、行く先々で「死刑か無期か」の事件の受任機会に遭遇するという。勿論、押しも押されもせぬ有力刑事弁護人だが、拝聴する限り、やはり事件に育てられていくのだろうと思わせられるところが随所にあった。
例えば「毅然と証言することが亡くなった被害者のためになる」と検察側証人を励ました(?)裁判官をその場で咎められなかったという反省。法廷での(気後れしないことは勿論)瞬発力は、天性のものもあるにはあるだろうが、やはり実践経験に負うところが大きいだろう(無闇と経験年数要件を敷くことには反対であるが、ないでは依頼者に迷惑を掛けるばかりである)。
経験を通じて体得されていった技術で記憶に残っているものは、
・絞って伝える能力
・整理手続を主導する
・公判中、毎日議論して、弁論パワポを毎日作り替える
あたりか。
弁論パワポを毎日作り替えるのは賛否両論(作り替えを要しない予定調和と対極的)、絞って伝えるというのも良し悪しだと思うが(個人的にはさほど賛成しない)、極限的な事案の実践を通じて磨かれた技術を盗めるとあれば悪いはずはない。
これも全国的に著名な岐阜の神谷弁護士は、「研修を受けたら明日から実践すること」を口が酸っぱくなるくらいに強調されるが、ちょっと試してみても良いかなと思わされるもののある研修の一つには相違ない。
(弁護士 金岡)