本欄本年1月24日付け、「略式不相当決定をした裁判官の『続投』の当否」について、本年1月25日付けで忌避申立を行ったところ、本年2月14日付けで通常却下された。つまり簡易却下ではなく、忌避を申し立てられた簡裁裁判官は、(弁護人の主張を容れて)地裁合議体に判断を委ね、地裁合議体が通常却下した(柴田誠裁判長)という経過である。後述のとおり、賢明な措置と言える。
周知の通り、手続内在的な要因による忌避は「しょせん受け容れられる可能性は全くない」から「訴訟遅延のみを目的とするもの」であるとして簡易却下を容認した最決1959年3月27日があるが、これが一人歩きし、あたかも「理由のない忌避申立は全て簡易却下出来る」かに振る舞う裁判官は非常に多い。
勿論、このような処理は誤りであり、裁判官は、自身の公平性に自信があればある程、簡易却下ではなく通常却下を選択すべきだとすら思われる。
因みに、前記最決の後に出された、名古屋地決1975年4月25日というのがあり(右陪席に木谷裁判官)、これは「右のような本件忌避申立に至る経緯、右申立の理由並びに本件公判の審理における弁護人の態度等諸般の事情に照らして考察すると、本件忌避の申立については、それが最終的に理由のあるものであるかどうかはしばらく措くとしても、少なくとも、これを『訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな』ものであると即断することはとうてい許されず、また、これをもつて刑訴法二四条一項後段にいう不適法な申立であると目することもできない。」として、簡易却下を取り消したものであるが、このように、弁護人の真意を酌んで冷静に対応してこそ、なんぼであろう。
ということで、珍しく通常却下された案件であるので報告した次第である。
なお、肝心の中身は、略式相当裁判官の続投を除斥原因としていることと対比し、「略式命令をすることを不相当と判断した裁判官が引き続き通常の審判を行う事態も容認しているものと解される」という、スカスカのものであったので、直ちに即時抗告したところである。
何れの結論を採るにせよ、起訴状一本主義が既に破られ、修復不可能であることに言及しないままの判断には、微塵も説得力がないし、論文試験の答練なら致命的な論点落ちの、落第点請け合いである。
(弁護士 金岡)