取調官の合理的裁量に委ねられている趣旨をいう政府見解とは裏腹に、取調べ立会を幾ら求めようと「今回は行いません」としか言われないのは弁護人間では常識である、と言えるだろう。
近時、在宅案件を相次いで受任し、取調べ立会を申し入れるも、やはり「今回は行いません」の嵐である。というより、私にして、取調べ同席経験は15年もの実践の中で五指に満たないのであり、その機能不全たるや、如何ばかりかと思う。
現状ではせいぜい、供述録取書等のゲラ版を取調室外で閲読するのが限界点である。もとより、依頼者が一字一句を書き写して弁護人に正確に報告し、署名押印の是非について相談する権利は揺るがない以上(ペンやノートの持ち込みを禁じようとする取調官も多いが、人権教育以前に社会常識にすら欠けると言わざるを得ない)、ゲラ版を見せた方が時間短縮であり、それならいっそ、立ち会わせた方が早いと思うのだが、なんとかは死ななければ治らないの類いだろうか。
脳梗塞後遺症で失語症が出ている高齢者や、摂食障害を中心とする複合的な精神症状から取調室の椅子に座ることすら出来ない依頼者ですら、親族を立ち会わせるのがやっとという状況を見るにつけ、この問題、捜査機関は一体なにと闘っているのだろうかと不思議に思う。
再現の予行演習だの、自白上申書の下書き練習だのと、見られたくない営みが余りに多いのは良く分かるが。
(弁護士 金岡)