第1審でA弁護士が保釈手続を行い保釈保証金を納付後、事件を引き継いで受任し、実刑判決を受けて控訴保釈手続を取った、という状況である。
判決から数十分と経たず、保釈請求し、これあるを期して預かっていた積み増し分以外は原審A弁護士納付に係る保釈保証金を流用する前提であったが、さて、いざA弁護士に連絡を取ると、「個人的事情で流用には応じない」「還付されたらすぐに引き渡すから、せいぜい1~2日、遅れるだけでしょう」と、こうである。

実刑判決も想定して保釈保証金の積み増し分を事前に預かるまでしていたのだから、A弁護士にも事前に流用の意向を確認しておくべきであったと臍をかんだが後の祭りである。幸い、別の所から資金を引っ張って来られたので、保釈が遅れることはなかったが、冷や汗ものであった。
確かにこれまでにも、別の弁護士名義の保釈保証金を流用しようと思ったら(精算金欲しさに)さっさと引き上げてしまわれたことがあるので、一般論として、こういったことも警戒し、事前に流用の意向確認を怠るべきではない、という教訓は得られよう。

・・勿論、言い訳が許されるなら、まさか「1~2日、遅れる分には構わないだろう」等と、職務基本規程47条(というより、最早、1日の遅れも許されないという常識的感覚)に違背してでも自己の都合を優先して早期保釈金納付に協力しない弁護士がいるなどということを想定しろと言われても困ると言いたいのではあるが・・こういう不心得者が跋扈する以上、弁えのある側ではより手厚く安全な注意を尽くさなければならないというところか。
とまれ、こういう手合いとのお付き合いは金輪際、御免被りたい。

(弁護士 金岡)