話を簡略化すると、分離されている元共同被告人ABで折半して被害弁償しようということで、窓口となったA側が立て替えて全額を賠償したので、B側から半額をお支払いしようとした、というところである。

 A側曰く「判決までは受け取らない」。

  その意図は、「一人で全額を賠償した誠実なAさん」を演出するためであろう。

  仮に「被告人ABで折半して被害弁償しようということで」という前置きがなく、A独力で賠償したところに、これを聞きつけたB側から半額提供の申出があったとして、判決後なら受け取るが判決までは受け取らない、として、「一人で全額を賠償している誠実なAさん」を前提に判決を受ける、ということでも、結構な違和感がある。勿論、積極的真実義務があるわけではないが、後に求償を受ける意図があるのに例えば「原資は全てA側由来である」「Bより相対的に軽くすべきである」と認定させる趣旨の立証をしているとすれば消極的真実義務違反との抵触も否定し得まい。

 ましてや、もともと「被告人ABで折半して被害弁償しようということで」進めてきた話でありながら、敢えて殊更に半額を受領せず判決後に払って貰いたい、などというのは、私の感覚では厚顔無恥といわざるを得ないものだし、消極的真実義務違反との抵触も更に深刻であり、弁護人の弁倫違反の問題を免れまい。

 こういうのは、上手いやり方、ではなく、ずる賢くもなく、単に、卑怯というのだと思う。

(弁護士 金岡)