逮捕時に暴力を受けて手の平を怪我した被疑者の、手の平の状態を客観的に裏付け得る、直後の証拠資料は何か?

この問いに、ぱっと「逮捕時の掌紋写真」(負傷部分が綺麗に印象されない)という発想が出てくるとすれば大したものだと思う。逮捕後の被疑者に起こる出来事を順々に考えていけば正解し得るとはいえ(そしてそれは類型証拠を探り当てる常套手段であるとはいえ)、自分で果たして正解にたどり着けたかは少々、心許ない。
このことは本日の研修で最も記憶に残った内容の一つである。

本日、愛弁にて「違法捜査を争う研修」が実施された。
私が何故か昨今、御用命頂く題材であり、捜査から尋問までの全般を押さえるのに格好の研修であるが、一人で担当しても新鮮味に欠けるので、東京から戸塚史也弁護士を講師にお迎えしてお話しを頂いた。上記は戸塚講演の一幕である。
捜査機関は、不都合な手の平の負傷を証拠化したりはしないだろう。よほど重症でなければ医療記録にもなるまい。その前提で、被疑者と一緒に出来事を追いかけ、知恵を出し合う中で、こういう証拠に辿り着くことは、正に王道的刑事弁護と言えよう。お招きして正解であったと思う。

(弁護士 金岡)