現在進行形で相談を聞いている案件である。
市の経営する施設からの騒音を何とかして欲しい、という民事調停を市長等を相手取って起こしたところ、裁判所から、民事調停法13条に基づく事件終了決定を受けてしまったという状況である。
裁判所の決定理由は不明であるが、相談者の手控えによれば、裁判官は、①騒音をなんとかさせる権利性に疑問がある、②国賠請求に切り替えるなら調停を続けられる、③弁護士を付ければ続行期日を指定する、などと発言したようである。なお、弁護士である調停委員からは、④政治的な話だから議会に陳情するとか選挙に出るとかすれば、という趣旨の発言もあったとのこと。
以上を前提とすると、④は論外であるが、①②③も大概、論外である。
(①)騒音差し止めの法的根拠は、人格権で良いだろう。それを踏まえて、騒音を何とかして欲しいという協議を求めることに、調停に耐える程度の法的権利性を見出すことは容易である。(②)被害は我慢して慰謝料を貰いなさい、などというのは裁判所が口にすべきことでは無いだろう。(③)弁護士を付けなければ民事調停が利用できないなどという法はない。
しかし現実には、こういう裁判官にあたり、民事調停法13条の終了決定を受けてしまったのだ。では、その救済はどうあるべきか。
調べてみると、即時抗告の可否について、下級審裁判例が割れている(こういう機会でもないと得られない知識である)。しかし、おかしな裁判官にあたり、違法にも却下された民事調停を、再度、行う方法が無くなる(再訴禁止効があるわけではないから、その裁判官がいなくなってからもう一度、ということはあるのかもしれないが、居座られている間、騒音からの救済は遠のくわけである)、などという結論は誰の目にもおかしいと映るのでは無いか。
考えさせられる話であり、好事家の議論も期待して、紹介した次第である。
(弁護士 金岡)