保釈申立事件における検察官意見の一部である。
「弁護人は、検察官の意見書が提出された後、補充の理由書を提出する旨述べているが、被告人の身柄拘束を解放する必要性は、弁護人が主張及び疎明する事項であって、真に身柄開放が必要な重要な事項であれば、検察官の意見を待たずとも、当初の申立書から主張し、かつ、疎明してしかるべきものであるから、補充を待たずに直ちに請求を却下すべきである」(名古屋高検、検察官田原秀範)
公益の代表者として、保釈されるべき事案は保釈されるようにしなければならないことが検察官の責務だとすれば、「被告人の身柄拘束を解放する必要性は、弁護人が主張及び疎明する事項」と開き直るのも不見識だとは思う。
が、それはそれとして、このように当事者主義を強調するなら、相手方当事者である検察官がおかしなことを言い出した場合に備え、弁護人が常に反論の構えをとることは同じ当事者として当然に理解して欲しいものだ。
こういう御都合的な主張は、「じゃあ検察官は反論機会不要なのね」という反当事者主義的な考えを突きつけられたときにどういう思いをするか、熟慮してからにすべきだと思う。
あと、もし「主張すべきは予め主張すべきだ」というなら、袴田再審で晒している検察庁の醜態はどう説明するんだろうか、と嗤いたくなる。
5点の衣類が捏造かどうかについて、主張すべきは主張し尽くしているなら、数ヶ月も費やして有罪立証の準備、機会など求めなくてもいいのではないだろうか。
天に唾する検察官をみていると、党派的で信用がおけず、もの悲しくなる。
国家権力を振り回す権限を与えられているのだから、きちんとした弁えを以て行動して欲しいと思う。
(弁護士 金岡)